パソコン・携帯で疲れた目をいやす方法
日経ヘルス
遠くのものがよく見えなくなったときに「目が悪くなった」と表現する。私たちは子供のころから健康診断などを通じて、「遠くまで見える目=良い目」と考えているからだ。
だが、目の疲れやすさに関しては、この常識が当てはまらない。目の疲れに詳しい梶田眼科(東京都港区)の梶田雅義院長は「現代人、とくにパソコンを使う時間が長い人では、遠くまでよく見える『目の良さ』が不利にはたらく。むしろ近視で『目が悪い』くらいのほうがいい」と話す。
理由はこうだ。人の目にはそれぞれ、自然にピントが合う距離がある。その距離に近い範囲にあるものを見ている限りは、目の調節機能に負担がかかりにくいため目が疲れない。パソコンは50~60センチの近距離に置かれるため、近くにピントが合いやすい近視の人は目の負担が小さい。
一方、遠くまでよく見える目(正視または遠視)の人は遠くにピントが合いやすいため、はるかに近い距離にあるパソコンの画面を見ていると、調節機能に大きな負担がかかる。
具体的には目の中の「毛様体筋(もうようたいきん)」という筋肉が縮んだままになり、「目の疲れはもちろん、頭痛や肩凝り、ひどい場合は吐き気やめまいなどを引き起こすこともある」(梶田院長)。こうした症状は、メガネやコンタクトレンズを使って、近視を強めに矯正している人にも起こるという。
■10分ごとに遠くに視線を
調節機能に由来する目の疲れを予防する手軽な方法として、「10分に1回、1~2秒ほどでもいいので、パソコンの画面よりも2~3メートル遠くに視線を移すといい」(梶田院長)。また、近視の人で矯正を強めにしている人は、レンズを弱くすると楽になる。正視や遠視の人には、作業用のメガネを作ることを梶田院長は勧めている。
目の疲れの原因が、実は目が乾く「ドライアイ」である場合も多い、と指摘するのは、南青山アイクリニック東京(東京都港区)の戸田郁子院長だ。「以前、疲れ目を訴えて大学病院を受診した患者さんを調べたら、約7割がドライアイだった」
オフィスワーカーの場合、パソコンの作業中は緊張して自律神経のうちの交感神経の働きが高まり、涙や唾液などが出にくくなる。さらに、「作業に集中するとまばたきの回数が減って目を開けている時間が長くなり、涙が蒸発しすぎてしまう」(戸田院長)。
■パソコンモニターは見下ろす位置に
そのため、ドライアイが原因で感じる目の疲れを防ぐためには、パソコン作業時のまばたきの数を増やすことが一番だ。とはいえ、作業に集中していると、ついついまばたきを忘れてしまいがち。まずは、画面を見下ろす位置にモニターを置くといい。こうすることで目の開きをできるだけ小さくして、涙の蒸発を防ぐことができる。
コンタクトレンズとの付き合い方も工夫したい。「コンタクトレンズ、とくにソフトレンズは装着中に目が乾きやすい。防腐剤不使用の使い捨て目薬を常備し、不快に感じたらすぐに点眼するといい。また、パソコン作業の多い日はメガネを使うようにすると、症状はかなり軽くなる」(戸田院長)
ほかにも、目を温める、肉食に偏るとドライアイになりやすい涙になるため肉を控えて魚を食べるようにする、といった工夫で目の乾きを防ぐことができる。上の図にセルフケアをまとめた。
これらの方法を続けても症状が改善しない場合には、眼科を受診したい。「治療では、涙に似た成分の目薬をさしてもらう。サラサラした生理食塩水タイプが基本だが、保湿効果のあるヒアルロン酸など粘り気のある成分が入ったタイプが向く場合もある」(戸田院長)
目薬を使ってもあまり効果が出ない場合は、涙の流出口に人工の栓をして目に涙をためる治療法がある。材質が2種類あり、いずれも健康保険が適用される。
涙は目尻の上まぶた側にある涙腺から分泌され、目頭の上下2カ所にある涙点から流れ出る。この出口を人工の栓「涙点プラグ」でふさぐことで目の乾きを抑える治療法がある。最近、使われる素材が増えて、快適性が増している。
従来から使われていた素材はシリコン。手術は不要で15~20分で処理でき、痛みもほとんどなく、涙をせき止める効果が高い。ただし、はずれやすかったり、違和感があったりという欠点があった。
最近使われるようになった素材が特殊なコラーゲン。低温では液状だが、体温でゼリー状に固まるので、サイズが合わないことによる違和感がなく、炎症を起こしにくい。ここ2~3年で広まってきた。
ただし、コラーゲンは徐々に分解されて排出されるため、効果が続くのは1~2カ月ほど。再びドライアイ症状が出るなら繰り返し注入することになる。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン2011年4月9日掲載記事を基に再構成]
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