春の健康診断の心電図検査で「不整脈」と言われると、「重い心臓の病気か」と思いがちだ。だが、ほとんどの場合は特に治療が必要でない「良性の不整脈」。一方で、管理や治療が必要になる「怖い不整脈」の場合もある。もし不整脈と診断されたら、自分がどのタイプかを正しく理解すると、無用な不安にかられることがなく、必要な医療を受けられる。
川崎恵里子さん(29歳、仮名)は、春の健康診断で「心房期外収縮という不整脈」と言われてびっくりした。「不安な気持ちを抱えながら、後日、循環器の専門病院を受診すると、『あなたの不整脈は特に治療の必要はない』と言われ拍子抜けした」と話す。
「不整脈というと、心臓に重大な病気を抱えているように思うものだが、実は不整脈の多くは、心配も治療も必要ない」と説明するのは、循環器専門医で心臓血管研究所(東京都港区)の山下武志研究本部長だ。
不整脈とは脈の打ち方が不規則になったり、異常に速くなったり、遅くなったりすることの総称。心臓の中でも心室、心房のどちらで起こるのかなどによって、不整脈の種類も様々だ。
自覚症状がないケースも多いが、代表的な症状はどうきで、呼吸困難、めまい、失神などを起こすことがある。しかし、健康診断でわかる不整脈にはそうした自覚症状はないことがほとんど。心電図の波形から、不整脈があると診断されるものの、それが命に関わるものかどうかは別の話だ。
川崎さんが診断された期外収縮は、不整脈の中で7~8割を占める。左の表にも示した通り、健康な人でもかなりの頻度で起こす。
「期外収縮は、睡眠不足や飲酒、カフェインの摂取といった生活習慣や体調を反映して起こることが多い。糖尿病などの基礎疾患がないことが確認されれば、不整脈については治療をする必要はない」と山下部長は話す。むしろ、「期外収縮を起こしているということは、日常生活の乱れや、糖尿病や高血圧などの基礎疾患を知るためのバロメーターになる。期外収縮と診断されたら、規則正しい生活を心がけるのが一番」だそうだ。