デジタルデータを安く保存する
デジタルカメラで撮った写真やビデオレコーダーで録画した動画など、家庭でも大容量のデジタルデータを保存する機会が増えている。パソコンやレコーダーに内蔵されている容量をオーバーすると、保存のための記録メディアを追加で買い足す必要が出てくる。この出費を抑えるためのコツをまとめた。
東京都に住む会社員、下村俊介さん(仮名、36)は半年前にデジタルテレビとブルーレイ・ディスク(BD)レコーダーを購入した。テレビはUSB端子につないだハードディスク駆動装置(HDD)に録画できるタイプだ。ドラマ好きの下村さんは録画の機会が多く、BDレコーダーに内蔵されたHDD(容量320ギガバイト)は2カ月でいっぱいになってしまった。このため50ギガバイトの容量を持つBD用のディスクを購入し、もう一度見たいドラマを保存していた。
しかし、ディスクは1枚当たり約500円かかる。段々と費用が重荷になってきたし、ディスクを出し入れする作業も面倒になってきた。そこで下村さんは、ずっと容量の多い外付け型HDD(2テラバイト)を購入し、テレビに接続。1万4000円だった。十分使い切って5000円程度の節約になったという。
外付け型HDDを製造しているアイ・オー・データ機器によると、「テレビ番組の録画に使う人が大幅に増えている」という。HDDをつないで録画できるテレビは以前は東芝しか販売していなかったが、今はシャープ、ソニー、パナソニックなど大手メーカーのほとんどが対応している。「昨夏ごろから家電量販店のテレビ売り場にはHDDが並ぶようになっている」(パソコン周辺機器大手、バッファロー)
下村さんが買ったのは外付け型HDDだが、内蔵型のHDDとHDDケースと呼ばれる部品(テレビのUSB端子に接続するためのもの)を買ってきて自分で組み立てると、さらに節約できる場合がある。例えば容量2テラバイトのHDDを1万円、ケースを2000円で買うと外付け型HDDより2000円の節約となる。テレビ電源と連動してHDDの電源も入るタイプのケースがお勧めだ。
しかし、HDDには弱点もある。使い方や製品によってもばらつきはあるが、録画したデータが光ディスクなら30年前後もつのに対して、HDDは5年前後しかもたないことだ。寿命がくるとデータを読み取れなくなる。長期間とっておきたい番組などは光ディスクに保存する方が無難だ。
HDDと光ディスクの使い分け方は、デジカメ写真やビデオカメラの動画をパソコンを通じて保存する場合などにもあてはまる。例えば、撮りためたデータをいったんHDDに保存しておき、長く取っておきたい写真や編集済みの動画だけを光ディスクにコピーする。重要なデータはHDDと光ディスクの両方に保存してあるので安心だし、光ディスクの節約にもなる。
現在はDVD―Rドライブを搭載したパソコンを使っている人も多い。もし今までの習慣でCD-Rを使い続けている人は、DVD-Rに切り替えよう。特に4.7ギガバイトのディスクが割安で買える。
記録メディアの費用節約には、扱いを丁寧にすることも大切だ。まずはHDDを「ほこりや磁気が多かったり、高温多湿だったりする場所には置かず、強い衝撃を与えないようにする」(アイ・オー・データ機器)。データがいっぱいになったHDDでも長期間ほったらかしにせず、時々はテレビやパソコンにつないでデータをのぞいてみるのも寿命を延ばすのに有効という。
光ディスクは「指紋がつかないように扱い、ホコリがたまらないようケースに入れて屋内で保管する」(電子部品メーカーの太陽誘電)。また、不織布など柔らかい素材でできたケースに入れておく場合は、キズをつけないため、上に物を載せないよう注意しよう。
最近はUSBメモリーやSDカードなどフラッシュメモリーを用いる記録メディアも安く買えるようになってきた。しかし、単位容量当たりの価格は光ディスクよりかなり割高なのに、寿命はHDDと同じ5年前後とされる。このため「データを長期保存するためではなく、データを持ち運ぶといった目的に使うのが正解」(調査会社、テクノ・システム・リサーチの馬籠敏夫シニアディレクター)だ。容量と価格と寿命の3要因を見極めて選ぶことが長い目で見て節約につながる。
(稲川哲浩)
[日経プラスワン2011年3月17日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。