エンタメ!

映画セレクション

ヒア アフター 数奇な運命が結ぶ3者の物語

2011/2/18 日本経済新聞 夕刊

数奇なものがたりの流れに、静かに身をあずけてたのしむ映画である。いまや当代随一のストーリーテラーとなったクリント・イーストウッドが監督。スティーブン・スピルバーグが、製作総指揮。

開巻してすぐ、インドネシアのリゾートをおそう津波の描写に、目をみはらされる。休暇を恋人とすごしていた、フランス人の人気ニュースキャスター、マリー(セシル・ドゥ・フランス)は、水にのまれ、臨死体験をする。パリにもどってからも、垣間見た死後の世界が脳裏からはなれず、それについて研究し、本をかこうとする。仕事はおろされ、恋人もはなれる。

サンフランシスコの工場ではたらくジョージ(マット・デイモン)は、死者からのメッセージを受信する能力をもっている。かつては霊能者として活躍していたが、いやになった。普通の人間として生きていきたいのだが、周囲が彼の能力をもとめている。

その結果、ますます孤独が深まるばかり、という超常能力者のかなしみが、しみじみとえがき出される。

彼の唯一の趣味は、ディケンズ。毎晩、寝るときに朗読CDをきく。これが、いい味を出しているだけでなく、ストーリーの展開のキーにもなっている。

ロンドンに住む、一卵性双生児の少年。いつもたよっていた兄が不慮の死をとげ、弟マーカスは、とりのこされた孤独と不安にくるしむ。兄に会いたい……。

この3者のものがたりが並行してすすむ。接点のない彼らが、どう結びつくのかという興味と、3者それぞれの感情の描出のうまさで、最後までひきつけられる。死後の世界を信じるかどうかに、こだわる必要はない。それは、このよくできたものがたりの一部だ。

1970年代のスター、マルト・ケラーが出演している。2時間9分。

★★★★

(映画評論家 宇田川 幸洋)

[日本経済新聞夕刊2011年2月18日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

エンタメ! 新着記事

ALL CHANNEL