義兄弟
南北対立の間に生まれた友情
韓国の国家情報員と、北朝鮮の工作員。きびしい対立関係にあった男のあいだに生まれる友情をえがく。韓国映画ならではの劇的シチュエーションだ。
「渇き」(2009年)のソン・ガンホと「オオカミの誘惑」(04年)の繊細な二枚目スター、カン・ドンウォンが共演。監督は「映画は映画だ」(08年)でデビューした新鋭チャン・フン。
韓国に潜入中の北の工作員ソン(カン・ドンウォン)は、送りこまれた「影」というコードネームの暗殺者とともに、脱北した金正日(キムジョンイル)総書記のはとこを襲撃する。使命をはたせば、妻子の待つ北に帰れるはずだった。
小柄な初老の男ながら、標的とその家族をいとも冷酷に射殺し、小さなバイクでせまい路地をたくみに逃走する「影」という男の異能ぶりが、恐怖をのこす。
ガムシャラに追跡したイ(ソン・ガンホ)も、「影」をとり逃がしてしまった。
ソンもその場から逃げたが、標的の幼い息子をたすけたことが「影」に裏切りとみなされ、北に帰るすべをなくす。
この事件のすぐあと、金大中(キムデジュン)大統領と金正日総書記の歴史的な会談が実現して、友好ムードになり、まえから上司に嫌われていたイは、リストラされる。
そして、6年後。イは、私立探偵となり、逃げたベトナム人妻をさがす仕事で食っている。韓国社会の一断面が見え、興味深い。
偶然、肉体労働者をしているソンと出会ったイは、自分の仕事にさそう。実は6年前、たがいに事件の現場で顔を見て知っている。
そのことをかくし、腹をさぐりあいながら、仕事と生活をともにするうちに生まれる友情。
しかし、北朝鮮が核実験をはじめ、情勢が緊迫。「影」がまたやってくる……。
アクションと笑いの要素も多く、あきさせない。1時間56分。
★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2010年10月29日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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