論争は平行線だが、気になるのは、コレステロールが高いと薬を使ってでもすぐに下げる必要があるかどうかだ。

高いからといって、それだけでは「病気」とはいえない。高血圧や高血糖、喫煙や飲酒の有無などが複雑に重なり、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中、がんなどの発症リスクはあがる。こうした生活習慣病予防のため、脂質異常症という病気がある。

一度、狭心症などを患った人がLDL値140以上の状態を放っておくのは問題といえるが、健康診断や人間ドックでこの値を一度超えたからといって、ほかに目立った異常がなければ大騒ぎする必要もなさそうだ。

07年版指針を策定した帝京大学の寺本民生・内科主任教授は「コレステロールが高くていいはずはない」と前置きをした上で、「臨床現場にいると不要なスタチン類投与も見受けられる。LDL値140以上で脂質異常症の診断がつくが、この数字が薬物治療開始の基準ではない。生活習慣を改めてもらうのが先決だ」と話す。

薬の効果を調べるための臨床試験では、製薬会社の意向をくんで統計の解析に恣意(しい)的な操作が加えられることもあるとされる。

医学研究の客観性を評価する目的で今春発足した「臨床研究適正評価教育機構(J―CLEAR)」の桑島巌理事長(東京都健康長寿医療センター副院長)は「コレステロールにはよい面と悪い面とがある。一律の基準値だと必要のない治療を促しかねない。患者なのか健康な人なのかによっても適正な値は変わってくるだろう」と話す。

(編集委員 矢野寿彦)

[日本経済新聞朝刊2010年10月24日付]

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