肩・首・腰の「凝り」 温めて血行改善
張るカイロ、入浴も有効
日経ヘルス
デスクワークなど同じ姿勢を長時間続けることで起きる「凝り」。これは筋肉が緊張し、血行が悪くなった状態と考えられている。
そのため、温めて血行を良くするのがいいとされる。「特にこれからの季節は、使い切りタイプの張るカイロなどを使うのが効果的」と、整形外科医で竹谷内カイロプラクティックセンターの竹谷内康修院長はいう。保温効果が持続するうえ、張って固定できるのがメリット。肌着などに張り、マフラーなどで"ふた"をして熱を封じ込める。地肌には決して張らない。
張る場所は、右のイラストが示す3カ所。首や肩の凝りには、肩を覆う僧帽筋の上に張る。腰の凝りや張りには、背骨に沿って走る脊柱(せきちゅう)起立筋。腕のだるさなら、肩甲骨と腕の骨(上腕骨)を結ぶ小円筋に張ると良い。「いずれもパソコン作業など、崩れた姿勢を続けることで、負担がかかりやすい部位」と竹谷内院長は話す。
市販の張るタイプの外用消炎鎮痛薬を使いたい場合もあるだろう。これらの薬は凝りによる痛みをとるのが主な効能だ。張る前に「入浴で体をしっかり温め、血行を良くしてから、張り薬のパップ剤やテープ剤を張って休むのがいい」と日本医科大学医学部長の伊藤博元教授はいう。
最近は、面倒だからシャワーで済ませるという人も多いが、体を温めるには、やはり入浴が効果的だ。
浴槽で体ゆらす
スポーツ選手の健康管理などに携わり、法政大学でスポーツ医学&コンディショニング科学を担当する医学博士の伊藤マモル教授は、湯船の中で体を軽く揺らす"ふるふるマッサージ"を薦める。「38~40℃のぬるめのお湯にじっくりつかって血行を良くするのがいい。お湯につかるだけでも十分だが、さらに浴槽の中で体をふるふると揺らして動かすと、お湯の水圧で体をマッサージできる」
たとえば、浴槽に入って座り、腕を前に伸ばして手から腕全体を大きく海草が揺れるようにゆっくり動かす。手首をゆっくりと左右に反転させるイメージだ。ほかにも、太ももとふくらはぎをふるふると揺らすのもいい。浮力があるため、余計な力が抜けるのもメリットという。
「細かく素早く動かすと、負荷がかかるので、ゆっくり動かしてほしい。また、ひじはぴんと伸ばさず、緩めるのがいい」と伊藤マモル教授はアドバイスする。
温かい飲み物で内側から
一方、温かい飲み物で内側から温めて、血行を良くする方法もある。
「飲み物で凝りをとる」というのは意外なように思えるが、食べ物の体への影響を追究してきた中国伝統医学(中医学)では基本の考えだという。「凝った部位は『不通』といい、血や、体のエネルギーである気が滞っていると考える。あるいは『不養』という血液などの体液不足があるとされる。いずれも改善のカギは、体を温めて冷えをとり、血行を良くすること」と薬膳料理家で漢方キッチン代表の阪口珠未さん。
阪口さんが薦めるのは黒豆茶。いった黒豆にお湯を注ぎ、5分ほど蒸らして、飲む方法だ。「血を補う『補血』作用があるほか、利尿作用もあるから、むくみにもいい」(阪口さん)
内科医で漢方専門医の目黒西口クリニックの南雲久美子院長は、血行を良くする飲み物として、ココアとショウガ入りのドリンクを薦める。「朝の起床時に凝りを感じることが多い人は、寝ている間に過緊張になっている可能性がある。リラックス効果で、就寝中の過緊張を緩めるココアを夜の就寝前に飲むのがいい」(南雲院長)
日中や夕方に凝りを感じるなら、ショウガ入りのドリンクで体を温めて、血行を良くするのがいいそうだ。冷え対策にもつながる。
これからの寒い季節は服装も重要。「冬は、体が熱を逃がさないように、両肩を縮めて背中を丸める。その姿勢が凝りを悪化させる一因になる。熱は襟元からどんどん逃げるので、外出時もマフラーを巻くなど工夫を」と竹谷内院長はアドバイスする。
大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室の大平哲也准教授は、どんな要因が肩こりに関係するかを明らかにするために、約8000人の肩こりに悩む人の生活習慣を調査した。すると、ストレスが原因として浮かんできた。「当初考えていた運動不足より、ストレスの方が強くかかわっていることがわかった」(大平准教授)という。
ストレスは血流を悪くし凝りを引き起こすと考えられる。大平准教授は「ストレスがかかると、自律神経の働きで体が緊張して血管が収縮する。筋肉内部の血流が悪くなり、凝り症状が出ると考えられる」と語る。
「どんな運動でも、ストレスをためにくくする。笑うこともストレス対策にいい」と大平准教授はいい、笑いと運動の要素を取り入れた「笑いヨガ」を薦めている。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン2010年10月16日掲載]
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