ナイト&デイ
軽妙さ光るアクション・スリラー
トム・クルーズ扮(ふん)するロイと、キャメロン・ディアスのジューンは、映画がはじまるとすぐ、カンザス州ウィチタの空港で出会い、ボストン行きの同じ飛行機に乗りあわせる。
ジューンは、ハンサムなロイとの出会いに、ロマンチックな期待をつのらせるが、すぐに、とんでもない事態にまきこまれる。
ジューンがトイレにいるあいだに、ロイはガラガラの機内にいた数名の乗客、客室乗務員、さらに副機長に襲いかかられ、そのすべてを秒殺する。その際に機長も死んでしまった。ロイが操縦桿(そうじゅうかん)をとり、機を不時着させる。
いくら映画だって、この荒唐無稽(こうとうむけい)さはないだろう、これは夢か、夢のシーンなのか、と観客もジューンといっしょにうろたえるのだが、ジューンはロイに眠り薬をのまされ、昏睡(こんすい)。
朝、ボストンの自宅で目をさますジューン。やはり夢だったのか。と思うと、そうではなく現実。
そして、その後も彼女は悪夢のような危機状況に、まきこまれつづけるのだ。
ある発明品をめぐって、CIAとスペインの武器商人が、ロイを追っている。ロイもCIAのエージェントなのだが、同僚の陰謀で裏切り者にされてしまった。
ロイ自身のかたるはなしが、どこまで本当なのか。わからないままジューンは、何度もロイに眠らされ、南海の孤島、アルプスを走るオリエント急行、ザルツブルク、セビリアなどで、目をさますたびに、すさまじい危険をかいくぐる。
ジェームズ・マンゴールド監督自身が言っているように、これは「シャレード」(1963年)や「北北西に進路を取れ」(59年)のようなたのしさをねらった息もつかせぬアクション・スリラーである。いまいちしゃれっけが不足の気もするが、この軽さは貴重だ。1時間49分。
★★★★
(映画評論家 宇田川幸洋)
[日本経済新聞夕刊2010年10月15日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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