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黒澤に喝采 海外ポスター

現地で製作、国際色豊かな150枚収集 槙田寿文

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NIKKEI STYLE

黒澤明監督の映画ポスターを集めて30年になる。日本版でなく、海外での公開時に現地でデザインされたポスターだ。黒澤監督ほど世界中のスクリーンを沸(わ)かせた日本人はいない。個性豊かなポスターからも、芸術家への敬意がしのばれる。

監督と会って夢中に

私の収集人生は監督に出会った19歳で決まった。高校2年のときリバイバル上映で「七人の侍」を見て以来、監督のファンだった私は、1978年の春、大学の映画サークルの仲間と東京都世田谷区にある監督の自宅を突撃訪問した。

夫人には「留守です」と言われたものの、諦(あきら)めきれずに玄関先をうろついていると、ゴルフバッグを抱えた監督が帰ってきた。家に入るのを見送って再びベルを鳴らした。監督は快く家にあげてくださり、中庭で30分ほど話した。

座談会にお招きする約束をとりつけ、翌年、成城学園前駅前近くのパブでサークルのメンバーと監督を囲んだ。「『天国と地獄』の犯人がインターンの医師とはおかしい。もうすぐ金持ちになるかもしれないのに」「背景の書きこみが足りないのでは」など、今思うと随分失礼な質問を、皆で監督にぶつけた。

どんな問いにも、監督は真摯(しんし)に、優しく答えてくださった。夢心地の中で、私は一生黒澤さんのことを研究していく自分の未来を確信した。以来、監督に関する資料を集めるようになった。

小さな店で買い集める

海外版ポスターを知ったのは、大学を半年休み、米欧を放浪したときだ。真っ先に向かったハリウッドの店で「七人の侍」のポスターを見つけた。三船敏郎扮(ふん)する野生児のような菊千代をアップで描く、あまりよくないイラストだったが、珍しさで購入した。パリでも「七人の侍」を見つけた。

本格的な収集は、90年代初めに仕事でニューヨークに赴任してから始まる。当地には映画ポスターを入手する様々なルートがある。一番高級なのはサザビーズやクリスティーズの競売。日本と違って映画ポスターは美術品と見なされている。日本映画では黒澤作品とゴジラが一番人気だ。

私も下見にだけは行った。実際に買うのは、映画好きのおやじさんが趣味でやっている倉庫のような店。もしくは住居を兼ねたアパートの一室で、独立間もない若者が一生懸命に切り盛りする店だった。彼らとは今も親しく情報交換する仲だ。

17カ国、150枚以上という現在のコレクションのベースは、6年に及ぶ赴任中に築いたものだ。公開された国の数を反映して、最も種類が多いのは「七人の侍」だ。13カ国20種類が手元にある。だが、デザイナーの創造力を刺激するのは「羅生門」のようだ。

旧共産圏に名作多く

三船と京マチ子のキスシーンや、殺人の場面を表現主義風にアレンジした旧東ドイツの図柄、歯をむき出した唇が空中に浮かぶシュールレアリスム的なチェコのデザインなどはとてもユニークだ。これに加え、ポーランド、ルーマニアといった旧共産圏には総じて優れたポスターが多い。

政治に抑圧された芸術家のエネルギーが、比較的自由な商業ポスターという表現に噴出したのだろうか。私の一番のお気に入りもポーランドの「七人の侍」だ。

意外にぱっとしないのが米国版だが、63年製の「椿三十郎」は素晴らしい。私は60年代以降、米国で長く東宝映画の配給・宣伝に尽力した大平和登さんにインタビューして、このポスターが誕生した経緯を知った。

デザイナーは大平さんの親友で、レコード会社の宣伝部長をしていたジム・シルクという人物だった。大の黒澤ファンで、ぜひやらせてほしいと頼んできたという。会社に余分な宣伝費はない。東宝の関連会社が経営する劇場横のレストランですき焼きをおごってお礼に代えていたそうだ。

ポスターから公開年を特定するのは難しいが、米国のものは古いニューヨーク・タイムズ紙を調べ、全作の公開年と劇場をつきとめた。その過程で、幻のポスターの存在が浮かび上がった。「七人の侍」が、初めて米国で公開された56年のポスターが未確認なのだ。

専門家の誰も見たことがないというから、ひょっとすると作られなかったのか。謎だ。中南米、アジア、中東のポスターも少ない。ただキューバでは「赤ひげ」のポスターが確認されている。

監督の生誕100年を記念して、9月17日から東京国立近代美術館フィルムセンターで、私のポスター26枚が展示される。黒澤映画が生み出したもう一つの芸術を堪能していただきたい。(まきた・としふみ=会社員)

[日本経済新聞 朝刊2010年9月14日付]

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