あごのトレーニングで上下の歯くっつく癖を改善顎関節症 口が開きにくい・あごが痛い

「口が開きにくい」「あごが痛い」などの症状が出る顎(がく)関節症。症状の軽いケースも含め、日本人の3~4割が経験するともいわれる。ここ数年は歯を削らずに、患者の癖を直す生活指導や、関節や筋肉のトレーニングによって症状を改善する手法が主流になってきた。

都内に住む主婦の前沢俊子さん(仮名、33)は、約2年前から口を開けづらくなった。おにぎりを食べようとしても平たくつぶさないとだめ。あごの関節も痛み、せんべいのような硬いものは食べられない。

20~30歳代に多い

家の近くの歯科医に診てもらうと、かみ合わせをよくするため歯を削る治療を勧められた。ただ、怖くてなかなか踏み切れず、東京医科歯科大学歯学部付属病院の顎関節治療部を受診した。

診察で、歯を食いしばる癖があることがわかり、これを直すようにいわれた。食後や風呂上がりに1日3回、口を開けてあごを動かすトレーニングをする。2週間ほど続けると、徐々に口が開くように。受診時には2センチメートルほどが限界だったが、今では4センチメートルまで開く。「これまでつらかった食事がとても楽しくなった」と笑顔だ。

顎関節症はとくに20歳代と30歳代に多い。代表的な症状は「口が開かない」「あごが痛む」「あごの関節がカクカクと鳴る」の3つ。大学入学や就職などで生活スタイルの変化から感じるストレスで歯を食いしばる癖が出やすい。大半はそれほど悪化しないが、あごに負担がかかり続けると痛みなどの症状が出る。

顎関節症の原因は長らくかみ合わせに問題があるからだと考えられてきた。治療法は歯を削ったり、樹脂製マウスピースを口にはめたりして、かみ合わせをよくする方法が主流だった。だが、なかなか改善しないだけでなく、かえって悪化する患者も多かった。

日本顎関節学会などが中心となり5~6年前から、原因や新しい治療法を検討した。癖によるあごへの負担や、あごの筋肉のこわばりなどが顎関節症の原因と考えられるようになってきた。

新しい治療法の基本方針として、東京医科歯科大の木野孔司准教授は「まず、あごに負担のかかる癖から直す」と話す。顎関節症の患者のおよそ8割に、上の歯と下の歯をつけ続ける癖があるという。

歯がくっついている時間が長いと、その分、あごの筋肉が常に緊張した状態になり、あごの関節を圧迫する。一般的には上の歯と下の歯をくっつけるのは食事や話をする時ぐらい。合わせても1日20分程度しかない。「何もしていない時でも歯が接している人は要注意」(木野准教授)。パソコンや机といった目に付く場所に「歯を離しておく」と張り紙をしておくだけでも、顎関節症の症状が改善するという。

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