シネマ万華鏡 ローラーガールズ・ダイアリー
17歳、人生への一大ジャンプ
ドルー(ドリュー)・バリモアが、ついに監督デビューした。4歳で映画に初出演してから今年で芸歴31年。「E.T.」(1982年)で世界的に有名になったのが、7歳のとき。20歳で製作会社をおこし、「チャーリーズ・エンジェル」(2000年)をはじめ、出演作をみずからプロデュースしてきた。満を持しての監督進出である。はたしてその成果は、アメリカ映画らしい精神がおどる、すばらしいものとなった。
けっしてハデな大作や問題作ではない。彼女がこれまでプロデュースしてきた恋愛コメディーと同じく、つつましい規模の娯楽映画だ。だが、そのどこをとっても、映画のたのしさが、ギュッとつまっている。
題材は、ローラーゲームの世界。60年代末から70年代はじめにブームとなり、日本でも毎週テレビ中継されたプロ・スポーツだったが、21世紀になってアメリカで復活しているという。
とはいえ、野球でいう独立リーグ的な規模である。ほかに職業をもちながら、好きで、このあらっぽいスポーツにうちこむ女性たちの、男意気ならぬ女意気が爽快(そうかい)にえがき出される。
偶然、接したその世界の空気に魅せられ、17歳の高校生がとびこんでいく。「JUNO/ジュノ」(07年)のエレン・ペイジ、適役だ。
テキサスのいなか町で、おしとやかな娘に、としつけられてきた少女の、自分の人生への一大ジャンプ。
17歳の少女の成長ものがたりと、タフな女どもの、乱暴なゲームの興奮をまじえた群像劇。どちらが主でも従でもなく、とけあい、からみあっているのが、おどろきだ。
バリモア監督は、出演もし、喜々としてアクションをこなしている。クリント・イーストウッドを継ぐのはこの人だろうという気がする。1時間52分。
★★★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2010年5月21日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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