雑煮はどちらの実家風? 夫婦の正月味バトル
イエの味がプレッシャー
「サトイモか……」
年末の買い出しといえば、カニやエビ、カズノコなど豪華な海の幸に心が躍るが、なぜか目の端に飛び込んでくるのはサトイモ。私にとってはサトイモがイエのシンボルなのだ。
正月、夫の実家で出てくる雑煮はしょうゆ味のつゆに大ぶりの大根、サトイモ、少しの小松菜にモチといった構成。私の実家ではしょうゆベースに鶏、千切りの大根とニンジン、三つ葉、モチにちょっとイクラを載せたものだ。
つゆは似ているが、夫のほうの雑煮は見た目が白っぽくて寂しく、味もあっさりしすぎている。作り手の私の好みで、我が家の雑煮は私の実家風。夫もおいしいと食べている。
だが、夫の実家にいけば必ず義母が作ったサトイモ雑煮とご対面することになる。そして義父が「お宅はどんなお雑煮?」と尋ねてくるのもお決まりの流れ。
ふと友人に話したら「それは夫の家の味にするものだといいたいのよ」というではないか。なぜ毎年聞くのか、忘れているのだろうと受け流していたのだが、イエのしきたり破りの指摘だったってこと? そういえば最近、サトイモのぬめりで時折かぶれるようになった。プレッシャーかな。
餅つき1升 跡取りは…
暮れがせまってくると、気分が重くなる。今年もまた餅つきをしなければならない。いや、今ではさすがに餅つき機を使って済ませているのだが、それでも餅米を1升くらいつくのは結構、大変なのだ。
スーパーで買えば簡単なのに毎年、苦行のように続けているのは、我が家のしきたりで「長男のつとめ」になっているから。中学生のころ、父親が臼と杵(きね)を借りてきて大汗をかきながら、ついていた。僕も好奇心で杵をとったら「跡を取ってくれるか」と言われ、以来なりゆきでこのつとめを果たしている。
嫁さんは「大変なのね」と、人ごとのように見ている。かかわりたくないのが本音だろう。僕もつきあわせるつもりはないから、ひとり黙々と作業する。
とはいえ、無事につきおえれば彼女も子どもたちも寄ってくる。できたての餅にきな粉をまぶしてほお張る瞬間は、心から餅つきをして良かったと思うのだ。
しきたりとして餅は親戚同士、宅配便で送り合う。この行事があるからやめづらい。お互いに心の中では「やめようよ」と思っているのに先には言い出しにくい。長男はつらいっすよ。
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