パワハラ扱いが怖い…職場で叱れますか?
「コラッ」に代わる言葉は…
「おまえアホか」「もう会社来なくていいよ」。まだ駆け出しだったころの職場はあちこちから、こんな暴言が聞こえてきたものだった。それに比べて今の職場はずいぶん静か。同僚はみな黙々とパソコンに向かっている。そういえば部下を本気で叱ったことがないかもしれない。
理由の一つは社内のパワーハラスメント講座。部下を怒鳴るのはもちろん「コラッと言っただけでもイエローカード」と説明され、「もう何も言わないのが一番」と同期は言う。
企画書の出来が悪かったとき、かつての上司はさんざんののしりつつも改善点を指摘。深夜まで書き直しに付き合ってくれた。ところが今は仕事の効率を優先し、黙って受け取り、こちらで書き直して終わり。これでは若手は育たない。
部下が自分より若いと限らないことも大きい。年長の部下と若手双方に不満を感じさせないため、あえてドライに対応をしている面がないわけじゃない。かつての年功序列なら、こんな心配は無用だったのかな。
仕事の指導に暴言は不要だし、若手にはかつての上司のように情をもって接したい。それをどんな言葉や姿勢で表せばよいか。叱るってほんとに難しい。
「取り扱い注意」なぜ増えた
ちょっと叱っただけなのに翌日提出されたのはうつ状態との診断書――。そんな若手が増えたという。叱る側はちょっとのつもりでも、叱られた側は胸にナイフが刺さったぐらいのダメージなのだ。昭和世代の叱り方は通用しない。平成の子たちは叱られずに育ってきたのだから……。
でも、男女雇用機会均等法の少し前に入社した私だって、職場でそんなに叱られたかな? 男職場にあって数少ない女。なんか大事にされていたような気がする。いや、「取り扱い注意」だったのだろう。
私より10~20年も先輩で、男社会に立ち向かってきた女性たちは、「女」を見せずに「男」として働いたそうだ。翻って私の世代。社会人になると「女子大生ブーム」が起こった。男性と同等の仕事を与えられながら、取り扱いは「女」というお得な立場だった。その「取り扱い注意」が今は男女に関係なく広がる。
「取り扱い注意」で来ただけに私も正しく叱るのが苦手かもしれない。「今の子は叱られ慣れていない」と言うけれど、要は昭和世代のおじさん、おばさんたちも叱り方がよくわかっていないということなのだ。
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