2012/6/17

ブームの予感(日経MJ)

理系学部人気、女子が下支え

第1号のテーマは「より多くの女子高生に興味を持ってほしい」と「お菓子と生物」にした。編集に参加した早大先進理工学部の大沢史佳さん(19)は消化の項を担当。菓子が消化されるさまを、胃腸などの手書きイラストに解説記事を付けて説明した。「小中学校の教科書レベルです」と笑うが、れっきとした独自コンテンツだ。

河合塾によると、12年春の国立大学入試の倍率は、法・経・文などの文系学部が軒並み前年比で落ち込んでいるのに対し、理学部が前年を0.18ポイント上回るなど、工・農・医歯薬保健などはすべて上昇。「女性の志望者増が理系学部の人気を下支えしている一因」(河合塾)という。

ホンダの電動一輪車「ユニカブ」に乗る、科学コミュニケーターの田端萌子さん(東京都江東区の日本科学未来館)

女子が理系を目指す背景には、就職観や結婚観の変化がある。大学の場合、理系は文系に比べ大学院への進学を選択肢として意識する。理系は就職先の確保が容易という印象がある一方で、就職時期は遅くなる可能性がある。過去には本人や家族が結婚や子育てのライフステージを考え、理系進学をためらう傾向があった。しかし就職氷河期が続き、女性の自立意識が高まる中で、ためらう理由が薄れている。むしろ、「手に職をつけて就職で有利に、と考える女性は増えている」とサイエンスライターの内田麻理香氏は指摘する。

企業も優遇、育休後の復職率100%

さらに入社後も待遇が手厚いという説もある。矢部さんは「研究職に就く女性を、企業は専門家として育成する。出産・育児で長期休暇を取得した後も企業側から復職希望があると聞く。復職率はほぼ100%ではないか」と指摘する。

理系女子の活躍の場が広がっていることもイメージ向上に一役かっている。日本科学未来館(東京・江東)には展示フロアで来館者に説明したり、実験やイベントの準備や実演を担ったりする「科学コミュニケーター」が39人いる。うち20人が女性で、大半が理系の大学院修士課程以上の修了者だ。

そのひとり、田端萌子さん(28)は東北大学大学院で惑星科学を専攻した。隕石(いんせき)や惑星についての、図や例えを使ったわかりやすい説明が子供の興味をひく。6月からは、ホンダが開発した電動一輪車「ユニカブ」を使ったイベントにも携わる。「科学が日常生活にどうかかわっているのか、しっかり伝えたい」と話す。

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