気に入ったアーティストの曲を買い、iPod(アイポッド)などで聴く。こんな当たり前の音楽の楽しみ方に、欧米で革命が起き始めた。英国の音楽配信会社スポッティファイ(Spotify)の出現だ。同社は1600万を超す曲をネット配信。利用者は曲を選ぶだけで、パソコンやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)など好みの端末で思いのままに聴ける。すでに利用者は1000万人を突破した。日本進出も間近といわれるサービスの実力はどれほどか。実際に試してみた。
音楽愛好家の一人として最初に感想を言っておきたい。10歳代から海外のアーティストのレコード、CDを買い音楽を楽しんできたが、今後も月に輸入盤CD1枚程度の料金を払ってスポッティファイを使い続けられるなら、私が購入する回数は大幅に減る。昨年は20枚以上のアルバムを買ったが、今後は年に2、3枚になるかもしれない。それでもこれまでより音楽を楽しめるし、音楽を通じた交友関係を広げることもできるだろう。それほどインパクトがあるサービスなのは間違いない。
スポッティファイは2008年にスウェーデン出身のダニエル・エク氏が創業した音楽配信会社。クラウドを通じ、利用者が望む曲をパソコンやスマホに配信するオンデマンド型のサービスが売り物だ。曲間に入る広告や有料会員から得る月決め料金の収入で運営。楽曲のネット販売とクラウドへの保存サービスを主体とするアップルのビジネスモデルとは異なる。現在、本拠を置く英国やドイツ、フランスなど欧州12カ国と米国の計13カ国でサービスを展開している。
サービス中の13カ国では、同社のサイトで登録しパソコンにアプリをインストールすれば、半年間は制限なく曲のストリーミング配信を受けられる。広告の排除や良い音質を望む人には「アンリミテッド」(米国料金は月4.99ドル)と、対象国外やスマホでも聴ける「プレミアム」(同9.99ドル)の有料コースが用意されている。今回はプレミアムで使い勝手を検証した。
まず、実際にどんな曲が聴けるかを調べる。アプリの検索窓にノラ・ジョーンズ(Norah Jones)と書き入れると、アルバムのコーナーに現れたのは5月1日に世界発売されたばかりのアルバム「リトル・ブロークン・ハーツ」(Little Broken Hearts)。その下に彼女の過去のアルバムが表示された。