新入社員を解剖 「カマッテ君」の胸の内

「先輩、もっと構ってくださいよ」――。そんな思いを抱く新入社員が増えていると、人事の専門家たちが言う。狭き門をくぐり抜け、やっと入れた会社で自分のキャリアを磨きたいと願っているが、周りは希望通りに育ててくれるわけではない。困惑する「カマッテ君」の日記から、その胸の内を探った。

5月○日 「新規営業先を開拓しろ」と言われ、名刺を配りに行くが、今日も成果はなかった。先輩は出払っていて、だれも教えてくれない。このままでは私は伸びない。(2011年4月、雑貨メーカーに入ったA子さん=23)
今年も新入社員が入ってきた(日本生産性本部が開いた新入社員向けの研修=東京・丸の内)

会社では誰もかまってくれない

期待に胸を膨らませて入った会社で若者たちが驚くのは、大学までと異なり、自分を構ってくれる人があまりいないこと。企業の採用・研修を支援するカケハシスカイソリューションズ(東京都新宿区)が11年度、研修を受講した新入社員に川柳を作ってもらったところ、「私越し 会話が弾む むなしさよ」(サービス業社員)などと、困惑する気持ちが強く出た。

いつの時代でも、新入社員は最初、職場に溶け込みにくいもの。だが、若手社員の実情に詳しい人事工学研究所(東京都中央区)の高崎宏史社長は、「新人の孤立感は以前より深く、構ってもらえるのを待っている傾向が目立つ」と指摘する。それでも先輩たちは忙しすぎて放置され、「この会社でよかったのか」と思い詰める人も多いという。

6月△日 第1希望だった人事部に配属され、人事のスペシャリストになる道が開けた、と思った自分はばかだった。先輩たちは「給料は上がらないぞ」などと暗い話ばかり。だれか、この先の道筋を教えてくれ。(11年、食品メーカーに入ったB男さん=24)

就職情報のマイナビ(東京都千代田区)が11年4月にまとめた新入社員意識調査(約1000人対象)によると、彼らが職場で求めているのは「指示が的確な上司」(68%)、「よくアドバイスをくれる上司」(48%)だった。

「キャリアを積み上げたい」という焦り

では、なぜカマッテ君が目立つようになったのか。親などからよく面倒をみてもらってきた事情もある。だが、専門家たちはそれ以外に、2つの意識変化も原因とみる。

一つは、自己成長への強い欲求だ。社会学者の岩間夏樹さんは「彼らは大学1年生の時から、『自分のキャリアを磨け』とあおられ、指導されてきた。入社したら、漫然と日々の業務に追われるのではなく、自分もしっかりキャリアを積み上げていきたいという思いが強い」と語る。

この世代は、08年のリーマン・ショック以降厳しさを増した雇用環境を間近に見てきた。就職戦線を勝ち抜いて獲得した仕事を維持するために、自らの能力を伸ばしつつ、キャリアを重ねたいという意欲は強い。

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