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“大プロデューサー”重源が演出する往生の夢  浄土寺(兵庫県小野市) 古きを歩けば(5)

2011/10/18

 兵庫県小野市に夕暮れ時、多くの参拝者が集う寺がある。鎌倉時代に創建された浄土寺だ。この寺には、極楽往生を願う民衆を阿弥陀如来が迎えに来る「来迎(らいごう)」という浄土思想のイメージを、太陽光を使ってビジュアルに見せる全国でも珍しい仕掛けがある。

夕照に染まる浄土堂。蔀戸を通して西日が堂内に入る構造になっている

 浄土寺の開祖、重源は平氏の南都焼き打ちで焼失した東大寺の再建にあたり、寄付集めに従事する役職「大勧進」として奔走。拠点として「別所」を7カ所設けたが、浄土寺はその1つ「播磨別所」だった。同寺の仏堂、浄土堂(国宝)は、南宋のスタイルを取り入れた豪放な建築様式「大仏様(天竺様=てんじくよう)」を、東大寺南大門とともに現代に伝える貴重な史料だ。本尊は仏師、快慶の手になる阿弥陀三尊像(国宝)。阿弥陀如来像は高さ5メートル超、脇侍の菩薩(ぼさつ)像も4メートル近い大きさで、雲の形の台座に乗って飛来する姿が表現されているが、そのモチーフを堂宇の構造がさらに膨らませる。

■西日に輝く仏像

太い円柱から何本もの挿肘木が突き出ている。こうした様式は「大仏様(天竺様)」と呼ばれ、東大寺南大門などと並ぶ貴重な例だ

 秋の午後、浄土堂を訪ねてみた。本尊の背後は壁ではなく開閉可能な蔀戸(しとみど)という格子戸になっており、自然光が入り込むようになっている。夕刻になると、それまで薄暗かった堂内に、蔀戸を通して西日が入り込み始める。光はまず西側の床を端から照らしだす。光は床で反射し、西側の天井へと届く。

 すると今度は天井の構造が威力を発揮する。天井板が張られていない天井は高く、白と丹塗り(にぬり)の朱の木組みがあらわな「化粧屋根裏」になっている。低く落ちてゆく西日が堂内中央の床を照らすころ、天井で乱反射した光が、金箔が貼られた三尊像の顔や体をまばゆく照らす。逆光の中でも仏像の顔は陰にならず、輝いている。

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