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エンディングノート 死にゆく父との共同作業

2011/9/30

大手化学メーカーの営業マンとして日本の高度経済成長を支えてきた父親が、67歳で退職。さあ、これから第2の人生だと張り切っていた矢先に、末期がんが発覚する。現役時代「段取り命」の仕事人間だった父親が、人生の最後に取り組んだのが、自らの死の段取りをつけること。そして、家族に残す覚書「エンディングノート」を作ることであった。

「エンディングノート」の一場面

そんな父親、砂田知昭氏の姿を、次女の砂田麻美監督が追ったドキュメンタリーである。1978年生まれの砂田監督は是枝裕和監督の助手を務めてきた人で、これが初監督作品である。

不治の病に侵され、死にゆく肉親を見つめる。テーマだけを聞けば、いかにも暗い、湿っぽい作品と思えるかもしれない。ところがこの映画はすこぶる明るく、軽快に展開する。

映画は、父親の死を迎える「段取り」を、トゥ・ドゥ・リストに置き換え、11章構成とした。父親はやるべき11のことを淡々と、そして精力的にこなしていくのである。

まずは神父を訪ねる。クリスチャンではないけれど、心安らかに死にたいからだ。葬儀が簡素なのも気に入った。郷里の老母に洗礼の了解を取り付けるべく、最後の家族旅行をする。旅先の志摩でアワビのステーキを一緒に食べる。孫たちを米国から呼び寄せて、気合を入れて遊ぶ。死んだあとに知らせるべき人のリストを作成し、会社を通して発表するニュースリリースの文案まで書く。それを長男に詳細に引き継ぐ……。

がん告知から死までの半年の間の、父親の意志的な行動に沿って、映画は進んでいく。その父親の意志がぶれずに最後までたどり着いていることが、映画の芯になっている。

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