私の思いを政策に…広がる意見発信・献金サイト
「国民不在」といわれがちな政治のあり方が、インターネット上で少しずつ変わり始めた。ブログなどを通じた政治家の情報発信の一方で、市民への意見・政策募集や、政治献金を受け付けるサイトが目立ってきた。自分や人々の生活をよくしたい。そんな思いがある人は思いを投げかけてみてはいかがだろう。
■透明・国民参加へ
「全国の学校に図書館司書の配置を求めたいです」(保護者)、「最近の生徒を40人受け持つことは不可能です」(教職員)。文部科学省のサイト「熟議カケアイ」には2010年9~10月、「これからの子どもたちの学び、どう変わるべきか」という問いかけに、市民から続々と意見が寄せられた。昨年4月のサイト開設からこれまでに、様々な問いかけに対し集まったコメントは1万4000件以上。コメントに意見を返したり、賛否を投票したりする人も多い。
政府が透明性の向上や国民参加を促す「オープンガバメント」という考え方が広がっている。米国ではオバマ大統領が市民に優先してほしい政策を募集したことが知られるが、日本でも09年10月から経済産業省が「アイディアボックス」と呼ばれる意見募集サイトを期間限定で設置。10年以降、「熟議カケアイ」や内閣府の「国民の声」も開設され、市民が行政に直接意見できるようになってきた。
気軽に意見が出せる分野はまだ限られるとはいえ、対応するのは実務を担う省庁の職員ら。それだけに、意見を出す人も行政の対応への理解を深められる。「政策以外の手段で解決法が見つかることもあるのでは」(文科省)とも期待する。
「熟議カケアイ」で紹介されているイベント「リアル熟議」など、サイトに連動し実際に対面議論をする場も広がってきた。共通の思いを抱えた人が集まる機会は、具体的な政策実現や問題解決の窓口となる可能性も秘める。
もちろん、しっかりした意見を持つには、日本の現状と政策を知ることが必要。有識者らの政策や各政党の評価を発信するサイトは参考になる。
竹中平蔵慶応義塾大学教授が代表を務める「ポリシーウォッチ」はその一つ。「正論を言う人が少ない」(メンバーの岸博幸慶大教授)との問題意識から、動画も使い政策関連の話題を解説している。評論家の城繁幸氏や一橋大学の小黒一正准教授らが主宰する「ワカモノ・マニフェスト」では独自の政策提言に加え、各政党の公約を若年層の視点で採点し公表している。
■議員情報一覧も
自分の考えに近い政治家を探したり、応援したりできるサイトもある。ヤフーが運営する「みんなの政治」では、国会議員の情報を一覧して見ることができる。議員の法案への賛否や、政党による法案解説も掲載。投票やコメントも可能だ。楽天の「楽天政治」は、ネットを通じた政治献金の仕組みを初めて設けたことで知られる。
これらのサイトへの議員情報提供などを請け負う特定非営利活動法人(NPO法人)、ドットジェイピーの佐藤大吾理事長は「政界では企業献金の廃止に向けた動きがあり、今後は個人献金が重要になっていく」と見る。市民と政治を結ぶサイトは、さらに増える可能性が高いというわけだ。
ネットで参加する人が広がれば、動きが見えにくい無党派層や若年層の声も政策に反映されやすくなるかもしれない。もっとも、ただ陳情する場になっては元も子もない。望む社会に近づくには、まず自分がどうすべきか。参加する一人一人も真剣に政策と向き合うことを求められている。(経済金融部 井上円佳)
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