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和風カップめん、「味の境界線」は関ケ原 編集委員 小林明

2010/10/8

カップめんには知られざる秘密が…

日本人の味覚には様々な地域差がある。

たとえばうどんのつゆ。関東ではドンブリの底が見えないほど色が濃く、味はカツオ風味が強くてやや甘辛いが、関西ではドンブリの底まで透けて見えるほど色が薄く、味は昆布だしがきいてあっさりしている。互いにかなり異なるのが実情だ。

では、東西の境界線というのは存在するのだろうか? 

「岐阜県の関ケ原で日本の味の文化圏が東西に分かれているらしい」

食品業界でこんな話を耳にした。関ケ原といえば、1600年に徳川方と豊臣方が対決した「天下分け目の合戦」で有名な場所。古来より交通や軍事の要所で関所が置かれていただけに、東西の文化圏を隔てる垣根のような役割を果たしていたのかもしれない。その真偽を確かめるため、早速、大手食品メーカーに向かった。

「確かに、和風カップめん『どん兵衛』のつゆの味は関ケ原を境に東西で変えていますよ」

取材に応じてくれた日清食品ホールディングスの担当者はこう口を開いた。詳しく言うと、〈図(1)〉のように新潟、長野、岐阜、三重よりも東を「東日本」、富山、石川、福井、滋賀、京都、奈良、和歌山よりも西を「西日本」とし、さらに「北海道」を含めて全体を3つに分けているそうだ。

そもそもつゆのだしはカツオと昆布がベースだが、地域ごとにその配分をかなり変えている。たとえば「東日本」はカツオだしの割合を多くして濃い口しょうゆで仕上げており、「西日本」は昆布だしの割合を多くして薄口しょうゆで仕上げているのが特徴。「北海道」は地元の利尻昆布のだしを使うことで地域色を強く打ち出している。

この味覚の東西境界線を探るため、「どん兵衛」の開発担当者は涙ぐましい努力を積み重ねてきた。東京から大阪まで新幹線「こだま」をせっせと乗り継いで、駅の立ち食いうどん屋や駅周辺のうどん屋を片っ端から食べ歩いたというのだ。その結果、太平洋側では「関ケ原」を境に東西で味覚が変わることを突き止めたという。「おそらく、しょうゆ文化の違いに基づいている」。かつて「どん兵衛」開発を指揮した安藤宏基・日清食品ホールディングス社長はこう推測している。

一方、日本海側の境界については、飛騨山脈が海に突き出した断がいである「親不知(おやしらず)」(新潟県)あたりになるらしい。

関ケ原は伊吹・養老山地が迫る狭い地形で京畿防備のための関所も置かれていた立地。飛騨山脈や親不知は人や情報の流れを寸断してきた交通の難所。こうした歴史や地形を背景に、東西に分かれた味の文化圏が形成されてきたようだ。


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