口溶け絶妙ロールケーキ、クリームと生地の一体感

ロールケーキとだて巻きのルーツは同じだった?(写真は浦和ロイヤルパインズホテルの「うらわろーる」)

●ちなみに――おせち料理ともつながり

ロールケーキの形をよく見てほしい。断面を見るとおせち料理に入っている何かに似ていないだろうか。「だて巻き」だ。単なる偶然ではなく、両者は密接な関係がある。

「お菓子の由来物語」の著者、猫井登さんによると、ロールケーキの歴史をたどると、現在のスイスで作られていた「ルーラード」に由来するという。それがヨーロッパに広がり、各地で作られるようになった。日本には16世紀半ば、ポルトガル人によって、カステラなどの南蛮菓子とともに伝えられた。当時は生地にジャムやシロップなどを巻いたお菓子だったようだ。長崎ではこれを基に、しっぽく料理に入れる「カステラかまぼこ」が作られるようになり、「後に江戸に伝わった際、『だて巻き』と名付けられた」(猫井さん)という。

長崎以外の地域にも伝わり別の発展を遂げている。代表例が愛媛銘菓の「タルト」だ。販売元の一つ、一六本舗(松山市)によると、幕府が鎖国していた17世紀半ば、松山藩主・松平定行はポルトガル船が来港したとの知らせを受け、警備のため長崎に赴いた。その際食べたジャムをカステラ生地で巻いた菓子に感動。故郷に製法を伝え、あんを使って作るようになったという。

戦前もロールケーキタイプの菓子は売られていたが、庶民の菓子として本格的に広まったのは戦後になってから。町の洋菓子店が広く扱うようになるとともに、山崎製パンが主力洋菓子として販売を拡大した。同社の社史によると、創業者の飯島藤十郎氏が1956年、英国のケーキ会社を視察した際、製品化を思い立ち、58年ごろから製造を始めたという。商品名は、イギリス英語でロールケーキを意味する「スイスロール」。1964年には東京に大量生産ラインが完成。66年の関西進出、67年の名古屋工場稼働など同社の全国展開に歩調を合わせ、人気商品として全国に広がっていったようだ。

●記者のひとこと

試食会をしていて毎回、苦労するのがケーキのカットだ。全部で10商品あるので、カットケーキを買ってきても、全部を丸ごとは食べきれない。切り分けて食べ比べをしているが、なかなかきれいに切れないのだ。特に難しかったのが、今回取り上げたロールケーキ。どうしてもつぶれて、子どもが食べた後のように切り口が汚くなってしまう。一緒に担当する女性の同僚から「もう少し、おいしそうに切ってよ」と言われる始末だ。

試食をしながら、話はケーキの切り方に脱線。「お菓子の断面がきれいなパティスリーに外れはない」とある専門家が教えてくれた。美しく切るためには相当な技術が必要で、断面を見れば、シェフや弟子の腕前がある程度はわかるということらしい。

技術がないなら、せめて切れ味のいいナイフを使いたい。読者の皆様、おすすめのケーキナイフを教えてください。もしあれば、初心者にも簡単にできるきれいなカットのコツもお願いします。(赤塚佳彦)


●「日経スイーツ選定委員会」とは

3人の専門委員と3人の日経記者の合計6人で構成。専門委員は豊富な経験に基づいた通らしい視点で、記者はビジネスパーソンとしての素直な視点で評価。まず、3人の専門委員の意見を参考に書類に基づく第1次審査を実施し、10商品を候補に選定。次に、厳選された10商品を実際に6人で食べ比べ、専門委員の意見を中心に合議制で「3つ星」「2つ星」「1つ星」を決める。

●専門委員の横顔(五十音順)

清水好夫さん

1962年生まれ。2007年、スイーツ食べ歩きブログ「男のスイーツ」を開始し、「スイーツ番長」のペンネームで活動する。女性が圧倒的に多いスイーツファンの中にあって、男らしいペンネームや風貌(ふうぼう)とスイーツとのギャップが話題に。08年からスイーツライターとしての活動を本格化。ほぼ毎日更新し、最新の菓子を掲載。全国のスイーツを食べ歩き、これまでに紹介した店は1000軒を超える。得意ジャンルはあんこを使ったスイーツ。著書に「手みやげスイーツ100選」(東京地図出版)。

下園昌江さん

1974年生まれ。大学卒業後、専門学校やパティスリーで製菓の技術や理論を学んでおり、製法にも詳しい。お菓子の食べ歩き歴は15年。近年は特にフランス菓子に力を入れ、フランスを巡るツアーや焼き菓子を中心としたお菓子教室も開催。監修本に「とびきりスイーツ見つけた!」。ウェブサイト「Sweet Cafe(スイートカフェ)」主宰。

平岩理緒さん

1975年生まれ。小学生のとき、訪れたデパートでスイーツの魅力に目覚める。大学卒業後、食品会社のマーケティングに携わる。2002年、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」デパ地下選手権での優勝を機に、食の情報発信を本格化。退社後はフリーのフードコーディネーターとして活躍中。月に食べるお菓子は100種類以上。和菓子店での勤務経験もあり、和、洋菓子全般に詳しい。著書に「アフター6のスイーツマニア」(マーブルトロン)。コミュニティーサイト「幸せのケーキ共和国」主宰。