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新年度スタートまであと3日。新社会人として"未知の世界"に踏み出す若者には希望もあれば、不安もあるだろう。配属先の部署などが歓迎会を開くケースは多いが、社会人になって早々、宴席で失敗するのは避けたいところ。振る舞いやマナーについて、菊正宗酒造記念館(神戸市東灘区)の村田祥館長(59)に聞いた。

「酒席での差しつ差されつで先輩社員とコミュニケーションが生まれる」と話す菊正宗酒造記念館の村田館長(神戸市東灘区)

「酒席での差しつ差されつで先輩社員とコミュニケーションが生まれる」と話す菊正宗酒造記念館の村田館長(神戸市東灘区)

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マナーの基本は周囲に迷惑をかけない、嫌な思いをさせないことに尽きる。例えば酒を注ぐ際、コップに目いっぱい入れてしまうのは禁物。相手がこぼす可能性が高くなるからだ。しかし、8分目程度ならば、そうした心配も無用。村田館長は「気遣いの積み重ねが酒席のマナー。罰則などがあるルールとは違い、多少間違っても構わない。自然な振る舞いを心掛けるだけでも十分」と助言する。

先輩から「まぁ飲めよ」などと勧められた場合、どう対応したらいいだろうか?――

適正な酒量についても知っておきたい。やはり最も避けるべきは、飲み過ぎだ。社会人の先輩らの中にも飲み過ぎで、歩けないくらい泥酔したり、二日酔いで遅刻したりした苦い経験があるはず。こうした行為は周りに迷惑をかけ、仕事にも支障が出かねない。

相手からのお酌を時には断る勇気を持つのも社会人として欠かせない資質。自分の適量をしっかり見極め、マイペースで飲むことが重要だ。一方、先輩や上司側は、飲酒の強要がマナー違反になることを忘れてはいけない。

酒に弱い人はどうするか。小さなコップや杯で飲むのも手だ。"やわらぎ水"と呼ばれ、途中で水を飲みながら、酒をたしなむと酔いが回りにくいともいわれる。

つぎ方などは難しく考えなくても大丈夫。日本酒なら、徳利(とっくり)に両手を添えて注げば、見栄えが良い。受ける方も両手で猪口(ちょこ)を持てば、より好印象。もちろん、片手でのやり取りでも特に問題はないという。

さて、まもなく2年目を迎える今年度の新入社員は1年間、どんな経験を積んだのだろう。

大手ゼネコンに勤める神戸市の男性社員(24)は「上司の隣か、注文などがしやすい出入り口付近か。当初は座る場所に戸惑った」。入社1カ月後の昨年5月、先輩らに勧められるがままに酒を飲み、自分で歩けなくなった失敗談も明かす。しかし、最近は「初対面の人に印象に残りやすい自己紹介の方法が磨かれた」「普段厳しい先輩が酒で和らぎ、会話が弾んだ」と酒席の効果も感じ始めた。

社会人2年目になれば、さらに余裕が出るようだ。「初めは会話に入ることすらできなかった」という大阪府吹田市に住む金融機関勤務の永瀬久美子さん(24)は率先して上司や先輩の隣に座っている。酒席では聞き役に徹することで、普段聞けない話を引き出せるようになった。「自分に関心がないと思っていた上司から『仕事、頑張っているね。評価してるよ』と思いがけない言葉をもらい、自信がついた」と笑顔を見せる。

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酒席でのマナーは菊正宗酒造や宝酒造のホームページ(HP)のほか、リクルートのグルメサイト・ホットペッパーのFooMooなどに載っている情報も参考になる。

記者(34)もつい飲み過ぎてしまうことがある。一方で、酒席の会話をきっかけに記事のアイデアが生まれたケースも少なくない。

「酒は上手に付き合うことができれば、上司、先輩、取引先との重要なコミュニケーションツールになる」。村田館長が指摘するように、潤滑油としての酒の効用を楽しむことができれば、新社会人として充実した日々を過ごせるはずだ。

(大阪社会部 江藤俊也)

[日本経済新聞大阪夕刊オムニス関西3月29日付]

オムニス関西とは 大阪本社発行の夕刊で月曜から金曜まで展開するコーナーの名称です。オムニスはラテン語の「omnis(すべての)」という意味を込めました。暮らしに役立つワザや若者に人気のスポット紹介、歴史に埋もれた事実の発掘まで、表層をなぞっただけでは分からない関西の魅力を伝えます。

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