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ブームの予感(日経MJ)

おもてなし「ニッポンのココが残念」 外国人100人に聞く

 

2014/2/16

 東京五輪開催も決まり、「おもてなし」力で訪日外国人を呼び込もうともくろむ日本。丁寧できめ細かく、正確といった美点ばかりが強調される日本のサービスだが、死角はないか。日経MJは訪日外国人100人を対象に、日本のサービス業への不満を調査。結果を見ると、最大の壁は未熟なコミュニケーション力にありそうだ。

 「地下鉄は複雑すぎてわからないし、駅員さんに聞いても英語が全然通じなくて……」。ドイツ人女性(41

 東京五輪開催も決まり、「おもてなし」力で訪日外国人を呼び込もうともくろむ日本。丁寧できめ細かく、正確といった美点ばかりが強調される日本のサービスだが、死角はないか。日経MJは訪日外国人100人を対象に、日本のサービス業への不満を調査。結果を見ると、最大の壁は未熟なコミュニケーション力にありそうだ。

 「地下鉄は複雑すぎてわからないし、駅員さんに聞いても英語が全然通じなくて……」。ドイツ人女性(41)は東京・大手町駅で途方に暮れた。調査で圧倒的な1位だったのは、語学障壁の高さだった。

 単に英語をしゃべれる人が少ないだけでない。「飲食店に英語表記のメニューが少ない。せめて写真を載せてほしい」(オーストラリア人24歳女性)、「ホテルのテレビに英語チャンネルがなく、子どもたちの不満が爆発」(オーストラリア人男性48歳)。日本語中心のサービスに対し、不満は多岐にわたる。

 さらに明らかになったのは、多くの外国人が語学力だけでなく、説明の不足に不満を持っているということだ。調査結果の3位は「飲食店の食券システムがわからない」、4位は「飲食店で食べ方を教えてくれない」。日本人には当たり前のものも、初めて見る外国人旅行客にとっては珍しいものだらけ。それでも「店員は気にするそぶりもなく、ロボットのように淡々と自分の仕事をするだけだった」(タイ人女性24歳)。英語がしゃべれなくても、せめて説明する態度を見せてほしいという切実な思いだ。

■伝えようという気持ちが大切

  • 外国人客に湯葉の刺し身の食べ方を身ぶり手ぶりを交えて教える店員(栃木県日光市の「きしの」)
 栃木県日光市の和食店、きしの。「湯葉はこのしょうゆにつけてお召し上がりください」「これは何?」「ワサビといって、これも一緒につけるともっとおいしいですよ」。身ぶり手ぶりも交えて定食の食べ方を説明する店員に、ドイツからきたポーラさん(28)は目を輝かせる。

 「ほとんど英語がしゃべれない店員でも、伝えようという思いがあれば何となく通じる。みんな同じ地球人ですから」(岸野房子社長)。同店は外国人のツアーガイドやブログの口コミなどで評判が広がり、今や時期によっては外国人客が日本人客の数を上回る。

 「楽しみだった和食だけど、あまりおいしくなかったです」。インバウンドコンサルティングを手掛けるレジャーサービス研究所(東京・渋谷)の斉藤茂一所長のもとにはこんな声がしばしば寄せられる。よく聞いてみると、出てくるのは「卵をとかずに、白身に漬けてすき焼きを食べた」「刺し身にソースをつけた」など衝撃の和食体験。誤解を放置しておけば、今後日本は大きな商機を逃しかねない。

 6位の「食事の量が少ない」も、接客次第で解消の余地がありそうだ。「日本には大盛り無料の店も多いのに、外国人にはほとんど伝わっていない。ほんの少しの説明の手間を、日本の店はかけたがらない」(斉藤所長)。外国人スタッフの採用など多言語対応を熱心に進める企業も増えてきているが、その体力があるところばかりではない。語学力はなくても、ちょっとした工夫や気配りで乗り越えられるケースもあるはずだ。

■無料Wi-Fiやカード使えぬ

 観光立国へ向けた基本的なインフラについても、多くの不満が寄せられた。特に無料Wi―Fiやクレジットカードといった決済手段の整備については「先進国なのに」という落胆の声も多かった。

  • 外国人客に人気の浅草寺でも、「無料Wi-Fi」の表示は少ない(東京都台東区の浅草文化観光センター)
 2位の「無料Wi―Fiの整備の遅れ」を指摘したのは、回答者の約3割。最近では街中で「フリーWi―Fi」の表示を見かけることも増えたが「ほかの国に比べ少ないし、使いにくい」(オーストラリア人59歳女性)。

 店内で無料Wi―Fiが使えるとうたう店でも、事前に別途ネット接続をしてアカウント開設が必要だったり、プロバイダー契約が必要だったりという具合だ。Wi―Fiが使えるという条件で宿を探したのに、使えたのはロビーだけだったという笑えない話も。「日本ではメールチェックすらできないのか」(ニュージーランド人21歳女性)と悲痛な叫びが聞こえてくる。

 決済手段をめぐる不満も。5位の「現金しか使えない店が多い」と、9位の「日本円の引き出しや両替」だ。ただし、前者については「日本は現金社会」というイメージの強さから来る思い込みもあるようだ。

 ビザ・ワールドワイド・ジャパン(東京・千代田)は昨年、外国人300人超を対象に調査を実施。回答者の6割は、店に貼られたクレジットカードのステッカーを見るまでは、カード決済はできないと思い込んでいたという。「店のドアにステッカーを貼るだけで、入店客数や購入単価を上げる効果がある」(表参道地区の商店が加盟する原宿表参道欅会)

 「手持ちのキャッシュカードで現金をおろせるところが全然ない」(オーストラリア人49歳女性)という不満は解消に向けた動きも出始めた。NTTデータが納入する大手行などのATMでは、2015年度をめどにアジア・オセアニア地域の銀行のキャッシュカードが使えるようになる見込みだ。

 意外なところでは10位の「土産物屋が少ない」。確かにキーホルダーやマグネットといった土産物の定番を都心で調達するのは難しそうだ。

■異なる習慣、需要つかめず

 多くの日本のサービス業は長らく、日本人客を想定した商売を続けてきた。調査では、不満とまではいかない違和感を漏らす外国人の姿も少なくなかった。「不満とまでは言わないし、事情もわかるのだけど」と話すのは30代の中国人女性。「旅館の朝ご飯が早いのがちょっと……。せっかくの休日、昼前までゆっくり寝てブランチで済ませたい外国人は多いんじゃないかしら」

 実はこうした感覚のギャップにこそ商機が隠れている。訪日外国人には、日本人の感覚では読み切れない様々な潜在ニーズがあるからだ。

 「どちらの服がいいかしら」。試着客に聞かれ、店員がお薦め商品を1つ選ぶ。日本ではなじみの光景だが「相手が旅行客の場合『日本ではこんな商品も人気です』と土産用としてほかにも色々お薦めする」(渋谷109などに出店する若い女性向けアパレル)。すると、1人で10着くらい買ってくれることも珍しくないという。

 「日本の店員は丁寧に対応するばかりで、もう一歩外国人のニーズに踏み込めていないことが多い」(インバウンドコンサルティングを手掛けるやまとごころ=東京・新宿=の村山慶輔社長)。外国人の不満を解消するだけでなく、サービスを外国人発想に少し変える工夫もできれば、訪日外国人消費はもっと深掘りできそうだ。

(高倉万紀子)

[日経MJ2014年2月10日掲載]

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