医薬品やコスプレグッズ…ニッポン土産、ヒットの法則
機能性や品質、かゆいところに手が届く
化粧品や家電製品、ブランド品以外で購入する予定、またはすでに購入した品物について訪日外国人に回答を募った。購入者が最も多かったのは「医薬品・サプリメント」。特に中国人などアジア系の割合が高い。
ラオックス秋葉原本店(東京・千代田)の医薬品コーナーの入り口には、大幸薬品の整腸剤「正露丸」など外国人に人気の高い商品が並ぶ。小林製薬の「熱さまシート」や、花王の蒸気で温めて顔や体をほぐすシート「めぐりズム」シリーズなど、ちょっとした疲れや不快感を癒やせる商品も人気だ。
ドラッグストアのマツモトキヨシでは、同店舗限定で販売する佐藤製薬のミニドリンク剤「ユンケルD2」が観光客の支持を集める。「あらかじめ携帯電話に保存した画像を店員に見せて購入する人も目立つ」(同社)
2位に入ったのは「コスプレグッズ」。欧米系、アジア系ともに購入者が多かった。東急ハンズ池袋店(東京・豊島)では、人気アニメ「ONE PIECE」や「NARUTO―ナルト―」などのキャラクターをイメージした衣装が人気。日本刀を模した小道具など日本ならではの変装グッズを買う人も多い。
若い世代には、キャラクターグッズや玩具も好評だ。外国人客が全体の3割強を占めるキデイランド原宿店(東京・渋谷)では、にぎりずしの形をした無線操縦玩具や、タカラトミーのロボット玩具「バトロボーグ」が人気。映画「スター・ウォーズ」に登場する光る剣「ライトセーバー」型の箸など、代表的な日本土産にひとひねり加えた商品が支持されている。
3位は包丁や爪切りなどの「刃物類」。ラオックス秋葉原本店では、手元がよく見えるようルーペが付いた爪切りが人気だ。値段も1000円程度と手ごろなため、「両親への土産に」(30代中国人男性)とまとめ買いする人が目立つ。
金属類ではほかにも、象印マホービンやタイガー魔法瓶のステンレス製水筒の売れ行きが昨年秋頃から伸びている。今月は中国人観光客が増える春節(旧正月)の休暇に合わせ、昨年同月の7倍以上の在庫を用意したが「完売する勢い」(同社)だ。中国では外出時にマイボトルを持参する習慣があるため、家族用に色やサイズ違いで複数購入する人も多い。
日本メーカーの文房具も支持を集めている。東急ハンズ池袋店ではノートなど小物を装飾できるマスキングテープが女性に人気。チェック柄など様々な模様を用意しており、専用コーナーでは「アジア系の女性客が選んでいる姿をよく見る」(売り場担当者)。
パイロットコーポレーションの書いた文字を消せるペン「フリクション」シリーズは、幅広い世代に人気だ。国外でも販売しているが、海外で見つけにくい色など「10本以上まとめて束でかごに入れている人も多い」(売り場担当者)。
JTB総合研究所の波潟郁代企画調査部長は、「機能性や品質に対する要求が細かい日本人向けの商品が、生活水準が上がりつつあるアジアのニーズにマッチしてきた」と分析。百貨店やドラッグストア、コンビニなど「日本の消費者が普段、買い物に出かける場所が土産物の購入にもよく使われている」という。
観光客の土産物の選び方にも変化がみられる。ジャパンインバウンドソリューションズ(東京・江東)の中村好明社長は「アジアからの観光客は、ブログや交流サイト(SNS)の普及で、友人や芸能人が勧める商品を事前に調べてから来日する人が目立つ」と話す。
こうしたネット上の情報が、ヒット商品を生むこともある。例えば豆腐の盛田屋(福岡県那珂川町)の「豆乳よーぐるとぱっく 玉の輿」は、タイの人気女性ブロガーが紹介したことがきっかけで、タイ人観光客に人気の土産に成長した。
10月には外国人旅行者の消費税の免税措置の対象が、食料品や薬品、化粧品などすべての品目に拡大される。思わぬ商品がSNSなどで広まり、人気の土産物に成長する可能性もある。
ただ、ネット上の口コミなど情報源が多様化したことで「品質やデザイン、ストーリー性に対して目利きが厳しくなっている」(波潟氏)。土産物のヒット創出には、商品の特徴を海外にうまく伝える情報発信力がより重要になりそうだ。
(菊池友美)
[日経MJ2014年2月10日掲載]
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