地銀経営、なぜ厳しい? 地方経済停滞・低金利が打撃
近畿大阪銀行、関西アーバン銀行、みなと銀行はグループの垣根を越えて経営統合の道を選んだ。(統合契約を発表した2017年9月の記者会見)
地方銀行の経営が厳しさを増していると聞いたわ。どうして地銀経営は厳しい状況になっているのかな。地銀や政府は現状をどう打開しようとしているの。
地銀経営について、鷲見栄里さん(47)と鈴木正美さん(54)が、佐藤大和編集委員に話を聞いた。
――地銀経営の情勢はどうなっていますか。
金融庁が本業赤字となっている地域銀行数を集計しています。「本業赤字」とは、銀行の運営コストを貸し出しや手数料の収入など基本業務で賄えない状況です。2019年3月期には約100行の4割強が本業赤字で、一部は赤字体質が慢性化しています。
今は本業以外に株式や債券の運用で利益を捻出していますが、この状況が長続きするかどうか。日銀は19年春公表したリポートで10年後の28年度に地銀の6割が「最終赤字」になると試算しました。運用による収益で本業赤字を穴埋めできなくなるわけです。
――なぜこれほど厳しい状況にあるのですか。
根っこにあるのは地方経済の停滞ですが、直接の理由は日銀の金融政策の副作用です。日銀は金利を下げて世の中に出回るお金を増やし、物価を安定的に引き上げようとしています。マイナス金利の導入もその一環です。でも銀行にしてみれば貸出金利が下がれば、預金金利との差である利ざやが縮み、利益が削られてしまうのです。
その中で異例の高収益を実現していたのがスルガ銀行でした。シェアハウス向けの融資やアパートローンなどリスクの高い取引にのめり込みました。しかしこうしたビジネスモデルは持続不能。結局、巨額赤字に転落しました。
メガバンクも地銀と同様に日銀の金融政策の影響を受けていますが、大手銀行は米国やアジアなど海外展開に活路を見いだせます。これに対して、地銀は地域によっては人口減や企業数の減少が急速に進んでおり、八方ふさがりの状況です。