学業欄はどこまで書く? エントリーシートの5大疑問
ホンネの就活ツッコミ論(98)
今回のテーマは「エントリーシートの素朴な疑問」。エントリーシート・履歴書の提出ラッシュで私のところにも学生からのエントリーシート添削依頼・就活相談が殺到しています。今回はエントリーシートについての素朴な疑問について5点、お答えします。学生の疑問は「なんでも自己PRを入れた方がいい?」「学業欄はどう書けばいい?」「逆求人型サイトの自己PR欄」「ガクチカ欄は苦労したことでないとダメ?」「『自由に書け』はどう書く?」です。
疑問1:「なんでも自己PRを入れた方がいい?」→抑えめに
うーん、いまだにいますね。就職指導で自己PR過剰症候群に陥る方は。確かに自己PRをどんどん出した方が有効な時期、というのはありました。ですが今は学生有利の売り手市場。しかも企業側もエントリーシートを相当、研究するようになってきました。
それもあって、どの欄にも自己PRを入れればいい、とは決していえない状況です。そもそも日常会話でもちょこちょこ「俺(私)ってすごい」アピールを入れる人、どう思います? ちょっと鬱陶しいと思うはず。それと同じです。
なお、志望動機欄には、むしろ自己PRを入れた方が有効、という手法を勧めるキャリア関係者がいます。本でいうと『凡人内定』シリーズ(3冊ともKADOKAWA)。私も書くネタに困る中小企業や大企業でも事業が広すぎる企業の場合、この手法は有効と考えて学生に勧めています。なお、志望動機に自己PRを交ぜる場合、自己PR欄があるのであれば、別々のネタにした方がアピールはしやすいでしょう。
疑問2:「学業欄はどう書けばいい?」→ウエットな話も
理工系学部から技術職・研究職を目指す場合、この学業欄で企業が求める研究内容に合致しているかどうかを結構、読み込みます。そのため、就活生は結構、細かい内容まで書くことが求められます。
では総合職採用の場合、どうか、といえば読むことには間違いありません。そこで就活生は技術職・研究職志望の就活生と同じく、細かい研究内容まで書こうとします。それで落ちるとまではいいませんが、どの研究者がどんな論を展開した、など細かい話に採用担当者が興味あるわけではありません。興味があるのはあくまでも就活生本人です。
そこで研究内容やゼミのテーマなどはやや抑えめにして、もうちょっとウエットな話を入れてはどうでしょうか。たとえば、グループ研究ならグループをまとめるのが大変だったとか、討論が大変だったとか。あるいは個人研究なら文献調査なども入れてみてください。
なお、苦労した話から「だから私は××能力が身に付いたので△分野で活躍できる」などと書くとそれはもう自己PR。鬱陶しくなってしまいます。頑張ったこと、苦労したことを書くところでとどめておいた方がいいでしょう。卒業論文テーマが未定の場合は「未定だが××分野に興味がある」くらいで十分です。もし、卒業論文を書かない場合は「4年次にさらに××分野(自分が興味ある分野)の研究を深めたい」などと書いてみてください。
疑問3:「逆求人型サイトの自己PR欄が長すぎます」→2ネタ分割という手も
逆求人型サイトとは、従来型の就活サイトのように学生が企業を検索するのではありません。学生は基本情報に加えて、自己PRなども合わせて登録。それを読んで興味を持った企業が学生に説明会参加などを促す、いわば流れが逆の就活サイトです。なお、逆求人型サイトによっては従来型の就活サイトと同様、利用する就活生は企業検索が可能なところもあります。
逆求人型サイトで大手はアイデムが運営するJOBRASS。それからiplugが運営するofferboxも東京や関西の学生を中心に人気が高まりつつあります。今年度だと、学情が運営する「あさがくナビ」が従来型の就活サイトから転換。逆求人型サイトに変わりました。似たところだと、従来型サイトの最大手であるリクナビはOpenESがあります。
リクナビのOpenESは1項目400字程度なので、この質問の対象外ですが逆求人型サイトによっては1000字以上のところも。そこまで長い場合、「1ネタをさらに細かく書いていく」「2ネタを分割する」のどちらか。後者だと、最初に「私の自己PRは2点あります」と入れてもいいですし、見出しを入れるのもいいでしょう。
私はエントリーシートで1項目に2ネタ以上入れるのは賛成できません。文字数が300~500字程度だと、確実に内容が薄まってしまうからです。ただし、800字以上あるのであれば話は別。もし、逆求人型サイトの1項目が800字以上あるのであれば、特に指定がなければ2ネタ入れてもいいでしょう。単純に考えて1ネタ400字程度。それであれば、内容が薄まるわけではありません。
疑問4:「苦労していないことを書いてもいいですか?」→もちろん
ガクチカの設問がどう書いてあったか、それにもよります。単に「学生時代に力を入れたこと」であれば、「苦労」とは指定していませんね。であれば、無理に苦労ネタを入れる必要はありません。学生であれ、社会人であれ、人は何かの能力を持っています。その能力を生かして楽に進められることもあります。その能力は先天的なものかもしれませんし、高校以前にそうではなく学生時代に苦労したことで成長した、という能力もあるでしょう。
もし、エントリーシートの設問に「苦労したこと」と指定がなければ、先天的ないし高校以前に習得した能力の話を書いても特に問題はありません。もしも、「苦労したこと」と指定があって、かつ、就活生本人が「そんなに苦労していないけど」と思うのであれば、こだわったことを書いてみてはどうでしょうか。
疑問5:「『自由に書け』がわからない」→得意な書き方で十分
設問の指定にある通り、自由ですね。この設問だと。書き方ですが、イラストや写真などを入れられるようであれば入れてみましょう。ただし、イラストが下手、とか、写真でいいのがない、ということであれば無理に入れる必要はありません。エクセルファイル作成が得意、という学生に以前会ったときはエクセルファイルを入れていました。そういうのも、有効です。
もしもイラストや写真などが特にない、ということであれば文章オンリーでいきましょう。ただし、欄が広い場合は見出しを入れていくと読みやすくなります。私はエントリーシートに見出しを入れるのはどうか、と考える方です。ただ、欄が広いなら見出しを入れた方が見栄えがよくなるのは確かです。
1975年札幌市生まれ。東洋大学社会学部卒。2003年から大学ジャーナリストとして活動開始。当初は大学・教育関連の書籍・記事だけだったが、出入りしていた週刊誌編集部から「就活もやれ」と言われて、それが10年以上続くのだから人生わからない。著書に『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)など多数。
・就職活動、出遅れても焦らない 企業は意外にやさしい
・学生の味方か敵か、就活カフェ
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・内定学生のESが就活生を惑わす理由
・趣味欄はどう書く?~ES作成で使える小ネタ
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