お好み焼き、たこ焼きのマヨネーズ 実は「ご法度」?
マヨネーズ(2)
先週末から「これなら給料泥棒とは呼ばれないだろう」という程度の忙しい生活が続き、探検にも探訪にも行く暇がなかった。というか、周囲からは「ぼーっとしてる」とか「また風呂に行きやがって」とか「こんな時間に酔っ払ってる」とか思われたかもしれないが、私としてはもの凄く忙しかったのである。
そりゃ確かに夕方になると毎日会社の風呂に入りましたよ。そりゃ確かに映画「ローレライ」を観て「あれれ」と思って以来、原作の『終戦のローレライ』を慌てて読み始め、文庫本の第4巻半ばまできましたよ。そりゃ確かに有楽町のガード下にも行きましたよ。でも忙しかったなあ。
ガード下といえば、かつてタイチョーやデスクが探検した有楽町から新橋にかけてJR各線の下に伸びる洞窟のことを覚えておられるだろうか。あの中に伊那の「ローメン」を出す店があるのである(現在は閉店)。場所が場所だけに一見の客はほとんどおらず、常連さんが静かにグラスを傾ける飲み屋なのだが、なぜか本格的なローメンがメニューに載っているのである。
ローメンはスープを張ったラーメンタイプと焼きそばタイプがある。その店で出すのは焼きそばタイプ。リンゴの甘酸っぱい香りがするソースでまとめられ、いい出来であった。確か写真が……あったあった、これです。
と、ここまで書いたところで福井新聞の記者から電話があった。
このサイトではあまり触れなかったが私は、小浜の食によるまちづくりの模様を新聞でリポートした。全国の自治体で初めて条例を制定し地域をあげて地元の食の見直しや食育に取り組んでいる。
その中核施設が16億円もの資金を投じた「食文化館」。鯖料理30種や全国の雑煮の食品サンプルが並ぶ様は壮観である。
面白いのは博物館的施設なのにキッチンが備えられていることである。
市内の幼稚園・保育園に通う子供たちが年長組になるとこのキッチンで料理体験をする。母親は一切手伝ってはいけない。小さな手が生まれて初めて持った包丁で豆腐を切る。ネギを刻む。そうして作った味噌汁や様々なおかずでご飯をいただく。ご飯は釜で炊いた地元産の米である。
子供たちは嫌いな食べ物も自分で調理すると喜んで食べるようになるそうだ。母親が料理する様子を面白そうに見るようになるのだともいう。
自治体としてはいわば先進事例で、同様の「フードバレー構想」を進めている富士宮と姉妹都市提携の動きがあるとか。
市内の飲食店では、魚のぬか漬けである「へしこ」を使ったリゾット、ネギ油で揚げたサバをパンにはさんだ「さばサンド」といった新顔も続々登場している。
うまかったのは小浜駅で土日休日だけ1日限定20個しか販売しない「焼き鯖そぼろ寿司弁当」である。誕生したのは昨年末。すでに駅弁ファン垂涎の幻の駅弁になった。
新聞にはそんなことを書いたのだが、小浜の動きを伝えた初めての全国紙記事だったのだろうか、福井新聞の記者からは「小浜のどんなところに注目しているのか」「取材して感じたこと」などを聞かれた。いつ記事になるかな?
個人的には黄色くてぽってりしたやまとぅーのが好み(沖縄チャンポン ひやかさないさん)
EGGO(エゴー)は戦後米国から入ってきた瓶入りのマヨ。多分、沖縄以外では売っていないのではないだろうか。
瓶入りタイプで思い出した。メーカーを問わず名古屋では瓶入りマヨが昔から全然売れないのだそうだ。理由は「底の縁に残ったマヨが取りきれないので損する」から。本当かどうかは知らない。以前、名古屋に行った折、地元の人から聞いた話。
エミー隊員納得いきません チューブなら最後まで使い切れるとも思えないんですけど。実際のところはどうしてなんですか?
チューブはハサミで切って全部なめることができる。やらないけど。
以前、お好み焼きを食べに行ったときのこと。仕上げにマヨネーズを付けようとしたら、「これは邪道だよ」って友人から言われました。この友人は非関西・広島圏の人です。私は関西に住んでいましたが、マヨネーズかけて食べても何も言われなかったですけど。
焼きそばにからしマヨネーズの入った大手メーカーさんの商品もあるぐらいですから、私は邪道とは思っていません(愛知県 社会人3年生さん)
ということで粉ものとマヨの関係を考察する。
と、ここから転じてお好み焼きの具になるカキ、ベーコン、エビ、イカ、豚肉にもマヨネーズがおいしいです(栃木在住カズボボさん)
カズボボさんもやはりたこ焼きにマヨである。だが……。
本場大阪ではかつてお好み焼きにもマヨはつけなかった。今日では当たり前になっている。マヨの浸透、恐るべし。
ちりとてちんさんも大阪の方。やはりお好み焼きやたこ焼きにマヨはご法度の時代が確かにあったようだ。
おっと三林京子タイチョーだ。
物心ついたときには家になかったのですが、日本のマヨネーズが販売されたのはいつですか?
私の長年の疑問は大阪にお好み焼き定食、焼きそば定食、焼きうどん定食があるのに、たこ焼き定食だけがなぜないのかというものである。
いまではたこ焼き定食が出現しているのかしれないが、少なくとも私が大阪に住んでいたころにはなかった。地元の人々に聞いても「ないのが当然なので、改めて理由をと言われても」という感じで、困惑を隠さなかった。
と同様に、たこ焼きにマヨはありえないと大阪の人々は思っているようである。だがしかし、そんな大阪人の声とは別のところで「たこ焼きにマヨ」は力をつけつつあるように見える。
「近代日本食文化年表」の大正14(1925)年の項に「食品工業がマヨネーズの製造を始め、中島商店より発売」とある。中島商店は今のキユーピーの前身。マヨが日本人の間で市民権を得るのは戦後のことであった。キユーピーの社史を読めばもっと詳しいことを紹介できるが、いまはその時間がない。
マヨと揚げ物の関係はどうか。皆さんからのメールを読むと相当広範囲に使用されているように見受けられる。しかも最近では外食レベルにまで広がっているようである。
その店には行った。空揚げではない物を食べた。安かったが、それ以外の感想は差し控える。特にギョウザに関しては。
デスクうーん マヨネーズって「油のかたまり」ですよね。それを揚げ物に塗ったくるのは――おいしいまずいの前に体に悪そう。えっ、僕が言うべきせりふじゃないって?
エミー隊員 私はマヨラーではなくケチャッパーですが、空揚げにマヨネーズはアリな気がします。週末に挑戦してみようかな。
こんなマヨなら揚げ物もOK?
我が家のマヨネーズは、ソース・マヨネーズというべきもので、日本で市販されているものとは全く違うものです……卵黄、それと同量のディジョンマスタード、同量ぐらいのワインビネガーかレモンジュース(のミックス)、カイエンヌ適量、コショウとたっぷりの塩にオリーブオイルだけか、ピーナッツオイル、ひまわりオイル、コーンオイルをその日の気分で混ぜ合わせています……これだけでも十分美味しく、トンカツも魚のフライも大丈夫です。
ただこれだと本当に黄色い普通のマヨネーズですが、これにバルセミコを少量加えるとまろやかさが増して、私はこのほうがより美味しくいただけると確信しています(ソース・エスパニョールさん)
ここまでくるといわゆるマヨネーズを超えている。マヨネーズというのはマヨルカ島の漁師が作っていたソースが元になっているそうだが、あるいはこのようなものであったのかもしれない。
以下、メールの束から「これは」と思う個所を抜粋で連打。
どなたかのメールにも「シシャモにマヨはうまい」というのがあったが、うちの娘に教えたら大変なことになりそうだ。
市町村合併で地元の町の名前が消えるのだろうか?
あと平凡な使い方としては、納豆と熱いご飯にマヨというやり方。結構関西地区ではポピュラーらしいですね(数ヶ月前の日経の記事で拝見しました)。ご飯の上に直接マヨをかけて、お醤油をたらしていただくってのもたまりません(元ミシガンの松本さん)
平凡かなあ。
恐ろしいカロリーになるかと思いますが、これが習慣化してからというものファストフード屋に行ってもピザ屋に行っても必ずマヨネーズをつけてもらっていました(*Kさん)
デスク、真似しちゃだめよ。
デスク断言 真似しません。でも、発見しました。僕はどちらかといえばマヨラーかなと思っていたのですが、全然そうではないようです。フライ+マヨもフライドポテト+マヨも納得できません。納豆やおでん、焼き鳥にマヨネーズをかけて出されたら、きっとお膳の上にマシンガンを乱射してしまうと思います。
エミー隊員 発見してしまいました。もしかして私、ケッチャパーじゃなくてマヨラーかもしれません。フライ+マヨもフライドポテト+マヨも食べてみたいと思ってしまいました。焼き鳥にマヨネーズをかけて出されたらとりあえずパクついてしまうと思います。
もうひとつお勧めはマヨネーズに「柚子こしょう」をたっぷり混ぜた「柚子マヨ」。そのまま野菜スティックにつけてもヨカですし、淡白な白身魚に塗って焼き魚にしても、ばさらかうまかですばい(久留米焼き鳥学会会長の豆津橋渡さん)
我が家には高菜常備。試すべきかどうか……。
デスク思案 マヨラーでないことは自覚しましたが、豆津橋さんの推奨となると心が動く……。
小学生の私たちには、たまにおすそ分けが回ってきたのですが、それはそれはおいしかったことを思い出します。昭和50年ごろの初秋の思い出です(お名前ありません)
なぜ、日本人はかくもマヨが好きなのか。
漬物にはごま油とマヨネーズが良いですね。七味か一味、サンショウを振っても乙なものです。揚げ出しマヨ豆腐もいけますよ……さすがに和菓子類にこそ付けませんが、おかきとの相性は抜群です(元マヨラー@高脂血症予備軍の豊下さん)
日本のマヨのアミノ酸がどうなっているのかちゃんと調べてみたい。ひょっとして味噌や醤油と似ていたりして。
先週紹介した「なめろ」「さんが」については房総生まれのJIROMALいずみさんから「正解」のメールをいただいた。ついでに「さんが」の由来についても。
「さんが」というのは「山家」なのです。山仕事を行う山小屋で焼いたモノなのです。だから、あわびの殻に詰めるのが正統派なのだそうです。
なるほど、そうであったか。
デスクの味方現る。
「オジサン」「オバサン」かどうかは年齢ではなく、精神の持ちようであるとここに宣言します。なぜなら私はオヤジですから。
それはそうと、「ソフトさきいかにマヨネーズ、七味パラリ」は美味しいですよね~。京都では丼、うどんに七味は常識なので、京都府警に逮捕されることはありません。もっとも私はデスク様と違いフツーの味覚の持ち主ですので、七味はアクセント程度が好きです(いけずな京女42歳さん)
デスク、言いたいことある?
デスク自信満々 そうだ! 精神の持ちようだ! 医者がなんと言おうが、エミー隊員がどうほざこうが、僕は若い! 決してオジサンではない! 全国の若き40代よ、ともに立ち上がろう!
デスク、立ち上がるのはいいけど「どっこいしょ」と言うのはやめた方がいいかも。
長くなった。これ以上は書かない。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
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