季節や時間、雰囲気でビールを選ぶ 美味の様々な要因
料理に合わせてビールを選ぶ(6)
味や香りのペアリングは非常にロジカルですが、ビールのペアリングはそれにとどまることはありません。"情緒的"な切り口も加えたペアリングで、さらにいっそうビールを楽しむことができるのです。
情緒もペアリングのひとつ
まずは視覚的なペアリング。赤いドレスを着た日にベルジャンスタイル・フランダースオウドレッドエール、ダークチャコールグレーのスーツの日にはロブスト・ポーターなんて粋な選択ではありませんか。夕陽を眺めながらアイリッシュレッドエールを選ぶのも洒落ていますね。
聴覚的なペアリングも面白いです。ペールエールにUKロック、ヴィエナにクラシック音楽、アイリッシュ・ドライスタウトにはアイルランド民謡、アメリカンペールエールには60年代のアメリカ西海岸のロックあたりが気分でしょうか。初夏の昼下がりに田園に流れる小川のせせらぎを聴きながらセゾンスタイルのビールを飲むなんてのも至福の組み合わせですね。波の音にはなにが似合うでしょうか? 視聴覚を合わせた、オペラや演劇、歌舞伎や落語にはどのようなビールが合うのか? 考えると楽しくなってきます。
季節感も大切にしたいものです。春には上品なホップのアロマが芽吹きを連想させるイングリッシュスタイル・ペールエール、夏にはシャープなジャーマンスタイル・へレスやアメリカンスタイル・ラガー、秋には実りを感じるオクトーバーフェストスタイルやデュンケル、冬には体を温めてくれるハイアルコールのスコッチエールやバーレイワインエールといった具合に、選んでいきましょう。
時間帯によっても美味感しくじるビールは変わる
時間帯にもビールをペアリングさせてみましょう。
朝はすっきりと眠気覚ましにコーヒービール、午前中にバナナやクローブのような香りがするヘーフェ・ヴァイツェンを飲み、ランチにはベルギーの農作業の合間に飲まれていたというセゾンを合わせ、昼下がりにはシャルドネのようなと称されるケルシュで一息つき、夕暮れ時は酸味が心地よいフルーツ・ランビックなんていかがでしょうか?
ディナーは、軽めのピルスナーを食前酒として楽しんだあと、サラダやパスタやシーフードにはホップの爽やかなペールエールやIPA、肉料理ならベルジャンスタイル・ダブル、デザートにはモルトもホップも重厚なインペリアル・スタウトでシメましょう。食後酒にベルジャンスタイル・ダークストロングエールをちびちびとやるのも素敵です。寝酒にはハイアルコールのアイスボックで安眠間違いなしです。
そして、さらに重要なのがビールと人のペアリングです。ビールは"誰と飲むか?"でその味わいも変わります。大切な人とふたりで飲むビール、気のおけない仲間数人と飲むビール、大勢が集まるビアイベントで飲むビール、静かに独りで飲むビール。あなたならそれぞれどんなビールを選びますか?
ペアリングがピタッとはまれば、ビールは2倍3倍、いや無限大に楽しい飲み物になっていきます。あなた自身の、あなたならではのペアリングをどんどん探してください。ペアリングは、あなたのビール観を一段と大きなものに広げてくれます。
[日経プレミアシリーズ「ビールはゆっくり飲みなさい」(日本経済新聞出版社)から抜粋]
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