女性と組織双方の変革必要 ホイットマン氏に聞く
Wの未来 やればできる
――バーラ氏のCEO就任をどう思いますか。
「バーラ氏や女性だけでなく、GMにとっても喜ばしいことだと思います。女性がトップの地位に上り詰めるのは自動車大手では前例のないことですが、バーラ氏はGMでキャリアの全てを積んできたエンジニアであり、非常に必然の選択です」
「男性社会とされる業界で女性がトップに就くことは他の女性の励みにもなります。ただ、必要ですが十分ではありません。オバマ氏が黒人初の大統領に就任したことは画期的な出来事でしたが、黒人が直面する全ての問題が解消してはいません。同様に、女性のトップ起用で一般の女性が抱える問題が解決するわけではないのです」
――自身が副社長に起用された頃との変化は。
「私は女性初の大統領経済諮問委員会(CEA)委員でもあり注目を浴びましたが、化粧や服装ばかり取り上げられたり、女性だから彩りのために選ばれたと言われたりと、不本意な評価も少なくありませんでした。今でもバーラ氏の髪形が話題に上ったりしますが、以前に比べると減りました」
「CEA委員を辞めた後、多くの企業から取締役就任の誘いを受けました。取締役会ではいつも唯一の女性でした。当時、企業は女性やマイノリティー(少数人種・民族)を取締役に登用するよう圧力を感じ始めていましたが、経済分野で必要な経験を持つ女性が少なかったことが理由の1つでしょう」
「現在、女性の取締役はまだ少数派ですが以前ほど珍しい存在ではありません。大手企業の女性CEOも少なくありません。GMを含めた自動車大手にも女性幹部が増えました」
――女性トップを増やすにはどうすべきだと思いますか。
「(交流サイト最大手の米フェイスブック最高執行責任者の)シェリル・サンドバーグ氏が唱えるように女性が前に出る努力も必要だし、同氏との『論争』がメディアに取り沙汰されたプリンストン大学名誉教授のアン・マリー・スローター氏が主張するように組織や制度の改革も重要です」
「米国は欧州諸国などに比べ育児休業制度が貧弱で、保育料も非常に高いのです。一方で、例えば私が講演する際に質問する女性が少ないのに、いつも不満を感じます。この2つは相互関係もあります。キャリア夫婦が直面する転勤などでの問題にも対処する必要があります」
「男性の役割も大きいです。トップの地位の大半を男性が占める現状では、男性がトップを目指す女性のメンター役を果たすべきでしょう」
「日本の『ウーマノミクス』のような女性の社会進出を促す政府などの政策は助けになりますが、変化はトップダウンだけでなくボトムアップの努力も必要です。例えば家族のあり方も変わらなくてはなりません」
(聞き手は芦塚智子)
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