女性の自立「衝突避け、解決導く」 橋本ヒロ子さん
国連女性の地位委員会日本代表(十文字中学・高等学校長)
女子校校長として学校の管理運営から地域との交流まで忙しい。その中で取り組んでいるのが国連女性の地位委員会日本代表としての働きだ。「これだけは聖域」。静かな物腰の内に情熱を秘める。
委員会は女性の参政権や差別撤廃など、条約の原案を審議したり綱領を打ち出したりする組織。2012年には日本政府代表団として「自然災害とジェンダー」に関する決議案を提出、約50カ国が共同提案者となり、採択にこぎ着けた。女性の地位向上と社会参加の推進はライフワークだ。
女性が自立し、働き続けることの難しさに何度も直面してきた。出身の山口県の実家には、古い家父長制度が色濃く残っていた。「家庭内でも常に男性優位。でも母の配慮で勉強ができた」
広島大学付属図書館の司書として仕事をスタート。20代後半に結婚、31歳で長女を出産した。ところが直後に夫が他界。そこへ米カリフォルニア大学バークレー校への留学話が舞い込んだ。最先端の蔵書管理技術を学べるまたとないチャンス。「もっと勉強したい、という思いが勝り、1歳4カ月の娘を両親に託して10カ月間、渡米した」
そうした経験が今につながる。原点は帰国後、就職活動での国立婦人教育会館(現・国立女性教育会館)の初代館長、縫田曄子さんとの出会い。「女性の社会参画を助けるため、情報センターをつくりたい」。縫田さんの情熱に心を打たれ、ジェンダー専門家としてのキャリアが始まった。
1991年には会館の課長職から国連アジア太平洋経済社会委員会事務局に転じ、タイを拠点に女性問題を扱う会議の準備に奔走する。このとき各国の政府関係者や、民間団体のキーパーソンとの知己を得た。人脈を糧にジェンダー分野の「ネットワーカー」と自認する。
「男社会」の慣習との戦いは続くが「いつも、衝突は避けたい、と思っているんですよ」と笑う。「相手のいいところを最大限、引き出して解決を求める」という発想が根底にある。教育者としても、女性の社会進出の推進役としても、前向きな思考回路がリーダーシップを生んでいる。
(さいたま支局長 長田正)
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