出張中にレンタカーを借りて事故 労災が下りない?
Answer:大変な目に遭われましたね。全治1カ月のけがとのことですが、むち打ちの場合は後遺症が後から出てくることもありますので、病院で精密検査をされた方がよいかもしれませんね。
さて、今回の交通事故は出張中に起こったにも関わらず、会社が労災を認めてくれないとのことです。
労災とは、働いている方が仕事上の理由または通勤中に負傷したり、病気に見舞われたりした場合に、治療に必要な費用や、休業中の賃金などを給付してもらえる制度です。
給付が下りるための条件は様々ですが,出張中のけがが労災と認められるためには、使用者の管理下で業務に従事していたか否か(業務遂行性)が重要です。
出張中は、その業務の成果や遂行方法などについて全体的に会社が責任を負っているため、特別な事情がない限り、出張全般について会社の管理下にあるといわれています。したがって、通常出張に伴わないような明らかな私用中での事故でない限り業務遂行性が認められます。
今回は、出張の際、得意先への移動中に事故に遭われたとのことですので、業務遂行性は認められる可能性は高いでしょう。
会社は、許可を得ずレンタカーで移動していたことを問題視しているようです。しかし、レンタカーでの移動が「通常のまたは合理的な順路および方法」である限り、労災といえます。
この会社では、出張先でレンタカーを借りる行為は普通のことで、レンタカー代も今まで何度も経費で落としてもらっていたとのことです。そうすると、ご相談者が得意先へレンタカーで移動することは、個人的な事情で順路を大幅に迂回したような事情がない限り「通常のまたは合理的な順路および方法」といえるでしょう。
保険料をごまかしている会社や労災の責任を追及されたくないと思っている会社では、労災を認めない傾向にあります。いわゆる労災隠しです。今回の件がそうなのかはわかりませんが、労災の可能性が極めて高いにもかかわらず労災を認めないのは不誠実な対応ですので、断られても諦めずに払ってもらうようにしましょう。
この人に聞きました
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼い始めた。労働トラブルを解説した書籍『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)が発売中。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。
[nikkei WOMAN Online 2015年5月5日付記事を基に再構成]
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