立ち飲み・赤ちょうちん… 「男めし」に女性が進出
郷に入れば、だろ
今日も慌ただしい昼食。足が向くのは立ち食いそばや牛丼店、脂ぎとぎとの中華料理店だ。「天玉そば! 大盛りで」。そそくさとかき込む麺やどんぶりはおしゃれなランチとは対極だが、働く男どもにとってほっと一息、憩いの空間だ。だが、これらの店で最近どうも落ち着かない気分になるのはなぜだろう。
おしぼりで首筋を拭ってから気づく。場違いに華やかな一角が店内に発生していることに。見るとそこには女子また女子。「俺たちの聖域」に女性陣が入り込んでいる。無言でどんぶりと対峙するわが同志たちを尻目におしゃべりに興じ、寸刻を惜しむヒルメシ時に入店待ちの行列が伸びようともお構いなしだ。ここはどこだ。カフェか。
夜の横町の赤ちょうちんもそうだが、これら「男めし」の店で女性の姿を普通に目撃するようになったのはいつからだろう。臆せず、自然に、そしてかしましく、彼女らは入り込んでくる。最近はカップルも多いな。
来ないでくれなどと言うつもりはないし、きっと店側も喜んでいる。でも老若男子が異性の目を気にせず、よろいを解いて食にいそしむことができる場の変質は寂しい。郷に入れば郷に従えで、何らかの配慮が欲しいのよ。
見~つけた
「ちょっと古い店だけど、魚が絶品なんだ」。以前、上司に連れて行ってもらった大衆居酒屋。分厚く切った刺し身の盛り合わせが忘れられず、女友達と行ってみることにした。
赤ちょうちんがともる雑多な路地を歩き、のれんをくぐると驚いた。店内は8割が女性客だった。食べて、飲んで、楽しげな笑い声が響いている。すっかり心理的に楽になった。まずはビールと料理を注文。刺し身、湯豆腐に魚の煮付け……。どれもほっとする味で、しかも財布にも優しい。おしゃれなレストランもいいけれど、気取らない服で、ふらっと立ち寄れるこんな店もたまらないなぁ。
でも常連だったおじさんたちはどこへ消えたの? 別の上司が教えてくれたのが、雑居ビルの地下にある立ち飲み居酒屋。前払いで飲む方式で、コップ片手に楽しげなおじさんたちが密集していた。その向かいのカレー店ではカレーをつまみに日本酒を飲むおじさんの姿も。
女性が集まると「騒がしくて迷惑」という常連の声があることは知っている。でも紹介してくれた上司は「うまい物はおやじに聞け」と少し自慢げだった。そんな名店をおじさんだけの穴場にしておくのはもったいないでしょ?
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