海外ロケバラエティーに見る テレビ各局の「お家芸」
海外ロケバラエティーが活況だ。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)は視聴率20%超えを連発してバラエティー番組の中でもトップの人気。『陸海空 地球征服するなんて』(テレビ朝日系)からは、破天荒のナスDという人気者が誕生した。各局が「お家芸」ともいえるロケのノウハウを取り込み、オリジナリティーあふれる番組を生みだす切磋琢磨(せっさたくま)が視聴者を引き付けている。
放送30周年を迎えた『世界ふしぎ発見!』(TBS系)に代表されるように、海外ロケバラエティーは昔からテレビ番組の定番コンテンツ。最近、このジャンルが盛り上がりを見せている。『イッテQ!』は視聴率20%超えが2017年(10月末時点)だけで16回。話題性では、17年4月から始まった『地球征服~』が光る。ナスDが誕生した日にはツイッターのトレンドワードで1位となった。17年10月からは『ヒャッキン!』(テレビ東京)や『世界くらべてみたら』(TBS系)がスタート。放送開始から2年半たつ『クレイジージャーニー』(TBS系)はDVDも人気で、17年9月末にはシリーズ累計の売り上げが15万枚を突破した。
「嘘を嫌う」視聴者に響く
海外ロケバラエティーが人気を集める理由はなにか。1つは、局のカラーや培ってきたロケのノウハウが、オリジナリティーにつながっていること。『イッテQ!』の日本テレビであれば、結果を出さなければ帰ってこられない「世界の果てまでイッタっきり」など、1990年代のヒット番組『電波少年』シリーズに通じる体当たり企画の数々で楽しませている。
『地球征服~』のテレビ朝日は、『いきなり!黄金伝説。』と同様にずっとカメラを回し続ける手法で、銃撃にあったりなどのハプニングもVTRに生かす。TBSの『クレイジージャーニー』は『学校へ行こう!』や『リンカーン』の系譜があり、人とロケを愛するスタッフがこだわりを持つ旅人の冒険や取材に便乗するスタイルだ。『ヒャッキン!』のテレビ東京は、「100円グッズを海外の人に見せる」という1点集中で勝負し、VTRの質の確保を最優先に考えている。これらの各局の持ち味がうまく働き、同じ海外ロケものでも自ずと差別化できているのだ。
また、予定調和にならないことも大きい。言葉や文化、土地が違うことで、ビジュアルも人とのやり取りも新鮮なものになるのは、海外ロケ番組の大きな魅力だ。加えて、最近は撮影機器が小型軽量化したことで、最少人数でロケに行けるようになった。予算があまりない企画でも海外に行きやすくなったことは、タレントを立てずにロケを成立させるケースの増加につながっている。
『地球征服~』のナスDは、U字工事のロケに同行していた現地ディレクターだが、思わぬ展開でその破天荒なキャラクターが知られてからは2手に分かれ、出演も兼ねるように。『クレイジージャーニー』や『ヒャッキン!』はスタッフのみで取材することで、内容の密度をより濃くすることに力を注いでいる。そうして収録した映像には、スタジオでの完成度の高い笑いとはまた違う、ありのままの展開があり、たとえ雑であったとしても、「嘘を嫌う」今の視聴者には響くのだ。
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2017年12月号の記事を再構成]
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