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見たら必ず欲しくなる 革財布のすごいイノベーション

2017/5/12

機能をゼロから見直し再構築された革財布がひそかな人気を集めている

 毎日、当たり前のように使っている革財布。多くの人が気づかぬうちに、一部の製品が大きな進化を遂げていた。従来の財布とはまったく別の発想で作られた新世代の財布たちはどうして誕生したのか。前回のボールペンの進化(「消耗品から『高級実用品』へ ボールペン、進化の秘密」)に続き、文具を見続ける納富廉邦氏が、日本で生まれた財布のイノベーションについて解説する。

■財布の形は完成されていると誰もが思っていた

 「革財布」と言って思い浮かべるのは、長財布、二つ折り財布、コインケースといったところで、イメージする形状や機能も、人によって大きく変わるということはないだろう。違っていても、せいぜい、長財布がラウンドファスナー型か二つ折り型か、二つ折り財布のコインケースが付いている位置の違い、といった程度ではないだろうか。デパートの紳士装身具売り場に並ぶ財布は、革の種類や色こそ違え、ほとんどが似ていて、違うのはブランドネームと革の品質だけ、という感じだったりする。

 もう長いこと、同じような形、同じような機能で作られてきた財布は、誰もがいきなり使うことができて、使い勝手も十分洗練され、何かを新しくする必要はないほどに完成されていると思われてきた。実際、誰も不便だとは思っていなかったのだ。

■これまでの財布にはなかったアイデア、機能、デザイン

 2001年にエムピウという小さなブランドから、一つの財布が発売された。「millefoglie」と名付けられた、その革財布は、あまりにも財布の形をしていなかった。ひっそりと売られていたこともあるが、発売後5年たった頃から、じわじわと売れ始め、今ではロングセラーのヒット商品になっている。

写真は「millefoglie」(エムピウ)にICカード用ポケットを付けた改良型「millefoglie II P25」。 知らない人がみたら革製のカードケースのように見えるかもしれない

 その財布を作ったのは、1級建築士の資格を持つデザイナーの村上雄一郎氏。財布の機能を見直し、従来の形を改良するのではなく、ゼロから「財布」を再構築して作られた製品は、コインはコイン、紙幣は紙幣、カードはカードと、それぞれとても出し入れがしやすくなっていて、しかも財布を開いたら、1方向から全ての機能にアクセスできる。つまり紙幣とコインを出す時、コインとカードを出す時、持ち替える必要がない。そして、大量の紙幣やコインを入れてもコンパクトさを失わない。革も上質な植物なめしの革で、使い込むと味わい深くなる。機能だけでなく、大人の持ち物としてデザインも優れていた。ただ、見た目が財布には見えず、革製のカードケースのように見えてしまうのは、余りにも従来の財布のイメージとは違っていたからだろう。そのデザインと使い勝手は、発売から15年以上たった今でも新鮮だ。

箱形に立ち上がるコインケース部は必要な額のコインをスムーズに出し入れできる。紙幣も折り曲げずに収納可能。札を押さえる部分にはICカード用のポケットがある。仕切り付きのポケットでカード類の管理も楽に行える

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