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白河桃子 すごい働き方革命

キリン「なりきりママ」、次はパパ 介護にも生かせる キリン「なりキリンママ」プロジェクト(後編)

2017/4/21

――スケジュールの共有化、顧客情報の共有化、会議の時間の前倒しや会議時間の短縮、前倒し業務、社内はもちろん、社外との良好な信頼関係作り……ワーママがやっている工夫がすべて挙がりましたね。

■「なりキリンママ」にはメリットがたくさんあった

金田亜弥香さん キリンビール 関信越流通支社 北関東流通部主任、娘(仮):はなちゃん

―― 皆さんは実験中、退社後も何か特別なことをされたのですか? 実際に子育てがあるわけではないけれど、できた時間を何に活用するのか、重要ですよね?

井尻 帰宅後は、ママになりきって子ども向けの料理を作っていました。ちょうどハロウィーンが近かったので、パンプキンカレーを作ってみたりしましたね。早く帰る習慣は、このプロジェクトが終了した後も続いています。

河野 私も定時で帰宅した時は、料理をするようになりました。あとは、資格の勉強です。私はソムリエの資格をとるための勉強をしていたんですが、これまでは残業する日が多くてなかなか勉強時間がとれなかったんです。それが、定時で帰ることで勉強がはかどり、先日一発で合格することができました。

金田 実験期間中は毎日お弁当を、しかもキャラ弁を作っていました(笑)。お弁当の材料を買うため、会社の帰りにスーパーに寄っていたんですが、改めて生活者の視点に立てたことが思いがけない収穫でした。考えたら、みなさんが夕食前の買い物に来る時間帯のスーパーに、お客としていったことがなかった。

 スーパーで気付いた点は、印象に限らず食品についても部署内でシェアするようにしました。例えば、ささいなことなんですけど、お総菜の大型パックが売れ残っていたから、もっと小分けのパックであれば買いやすいのではないかとか。今はイースターが近いから、関連する商品が売っていたとか。カスタマーアドバイザーとしての視点を養うことができたと思います。

■いずれは評価制度の見直しが必要になってくる

樋口麻美さん キリンビール 近畿圏流通第2支社 営業部主任、娘(仮):つむぎちゃん

――ほとんどの人が労働時間を減らした方がいいと分かってはいますが、その一方で、残業代が減ってしまっては困ると抵抗する人もいますよね。特に、専業主婦の奥様がいらっしゃったり、住宅や自動車のローンを組んでいる人にとっては死活問題になります。

樋口 家に帰ってやることが何もないのであれば、会社に残って残業代を稼いだ方がいいと思う人はたくさんいると思います。

河野 とはいっても、残業せず効率的に働いている人のお給料が増えないという構造には、違和感を覚えます。今回のプロジェクトでも、私たちは業績を維持したにもかかわらず、残業時間を大幅に減らしたことでお給料がかなり減りました。もちろん、それは周囲の協力があってこその結果ですが。

――働き方改革を進める上で、どの企業にも「評価と報酬の設計」という、同様の課題が浮上してくるでしょうね。

岩間勇気さん(以下敬称略) この先、評価制度の見直しは行われていくでしょう。必要性の低い残業による手当が減った場合は、家計としてのポートフォリオを組み直す必要も出て、出産などのため会社を辞めた女性が仕事に復帰していく流れになるかもしれませんね。

――働き方改革の後に生じる最も難しい問題は、評価制度です。中でも営業職は難しい。子育てをしながら働く社員が周りのメンバーからサポートしてもらって実績を上げたとしても、成果は担当者のもの。どのように評価すべきでしょうか。

岩間勇気さん キリン 人事総務部 多様性推進室 室長

岩間 業績は、労働時間や量のみで測れるものではありません。他社の動向をみると、時間当たりの生産性も評価の対象に入れる方向に進みつつあり、キリンの別の女性営業チームも時間当たりの生産性を人事考課の指標とするようエイカレに提言しています。当社としては、まず働き方改革に係る指標をマネジメント層の業績評価の対象とする方向でいますが、その下の層を含めた組織全体に対しては労働時間を短縮するためにチームとしての助け合いやナレッジ・情報共有が必要だという意識を高めることを、全社で「なりキリンママ&パパ実験研修」を行うことを通じて始めていきます。その延長線上で、評価制度や公平性の議論が進むことは間違いありません。

――育児や介護などの制約がある人の仕事は、周囲の人たちがサポートしなければなりません。こういった状況がエスカレートしていきますと、人間関係がギスギスしてしまうケースも少なくありません。「お互いさま」では済まなくなった時にどうするのか。会社は社員をどう評価するのか。報酬はどうするのか? この問題は、どの企業でも出てくるのではないかと思います。

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