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リーダーの母校

米ホテル校同期にバカにされないリゾートを 星野佳路・星野リゾート代表が語る(上)

 

2017/1/9

 星野リゾートを、軽井沢の温泉旅館から日本を代表するリゾート運営会社に成長させた星野佳路代表(56)。リゾート業界のカリスマ、風雲児などと呼ばれ、斬新な発想や経営手腕は、海外からも注目を浴びる。その星野氏がリゾート建設で常に心に留めていることがある。それは、かつて留学した米コーネル大学ホテル経営大学院のクラスメートに「バカにされないものをつくること」だという。

(下)日本への期待は何だ? コーネルで知った欧米人の本音 >>

■大学を卒業し、ホテルに就職した。

 慶応義塾大学時代は体育会アイスホッケー部に所属し、4年間、アイスホッケーにどっぷり。勉強した記憶はほとんどありません。頭の中もいつもアイスホッケーのことばかり。ですから、4年生で部を引退して家業を継ぐことを考え始めた時に、真っ先に思ったのが、少しは経営のことを勉強しなくてはいけないなということでした。

 どうせ勉強するなら、有名なところで勉強したいと思い、ホテル経営学で世界一といわれるコーネル大学ホテル経営大学院に行こうと決めました。ただし、そこに入るには、ホテル業界での実務経験と、しかるべき人の推薦状が必要。そこでホテルオークラに就職することにしたのです。

 当時のオークラの総支配人、山崎五郎さんはコーネルの卒業生。推薦状も山崎さんに書いていただきました。山崎さんだけでなく、コーネルの日本人卒業生は、そうそうたる顔ぶれです。例えば、元帝国ホテル社長の犬丸一郎さん、ホテルニューオータニ総支配人だった甲田浩さん、富士屋ホテルチェーン総支配人を務めた山口祐司さん、みなさん私の大先輩です。

■学生数は1学年50人。同じ学年に日本人留学生は星野氏だけだった。

「最初の半年は平均3時間の睡眠で毎日必死だった」とコーネル時代を振り返る

 コーネルのホテル経営大学院は2年コースですが、1年目の1学期(9~12月)は想像を絶する大変さでした。

 授業の最初にリーディング・アサインメントの本を渡され、こんな分厚い本を、しかも英語で1学期中に全部読まないといけないのかと思っていたら、1学期の課題ではなく翌週までの課題だと言われて、いきなり面食らいました。

 成績を決めるのは、試験の点数、リポートの出来、授業のパーティシペーションがそれぞれ3分の1ずつ。パーティシペーションは、どれだけ他の学生を刺激する発言ができるかが重要です。でも、当然、英語がネーティブの学生にはかないませんから、これまた非常に苦労しました。

 睡眠時間は平均3時間。食事の時間は1日トータルで1時間。残りはすべて勉強です。週末もありません。毎日、必死でした。地獄のような日々を何とか乗り切ることができたのは、大学時代に体育会で鍛えた体力のおかげだと思っています。

 ただ、大変だったのは1学期だけで、学期が終わるころには、英語にもだいぶ慣れ、勉強のコツやペースをつかむことができました。例えば、授業のパーティシペーションは、たくさんしゃべっても点にはならない、やはり中身が重要だということがわかり、英語は完璧でなくても、だんだん自信を持って発言できるようになりました。成績も、2学期(2~5月)以降は上がり、授業が楽しくなりました。

■ホテル業界のトップが次々と授業にやってきてスピーチ。刺激を受けた。

 印象に残っている授業の一つに、ホテルマネジメントの契約に関する授業があります。ホテル業界の最先端の話だったので、とても興味深い授業でした。

 当時はちょうど、ハイアットやマリオットなど、運営特化戦略を取る会社が急成長。それまでのホテルというのは、ホテルを所有する会社が運営も兼ねていました。つまり、所有会社は運営能力も持ち合わせていないとだめだったのです。それが、所有と運営を分けることで、運営能力がなくても、優秀な運営会社と組めば、ホテルを投資対象として所有することができる時代に変わろうとしていました。当然、所有会社と運営会社との間に契約関係が生じます。その契約はどうあるべきか双方の立場から考えるのが、授業の趣旨でした。

 ある日、米国内のヒルトンホテルの半分以上を所有する保険会社のトップが、ゲストスピーカーとして授業に来ました。運営会社を選んだ基準や契約の際に重視したポイントなど具体的な話が非常に面白くて、とても印象に残っています。

 コーネルはホテル経営学で世界トップなので、ホテル業界のトップの人たちが次々に授業に来て、話をしてくれます。生々しい話ばかりなので、とても新鮮で面白かった。

 ただ、授業で聞いた経営トップの話が、現在の星野リゾートの戦略につながっているかといえば、それはまったくありません。日本は米国と事情が違いますし、話は面白いけど、果たしてすべて戦略的に正しいかと言えば、必ずしもそうではないと思う部分もある。むしろ、マイケル・ポーターやピーター・ドラッカーなど著名な経営学者の本を読み込んで、ビジネスの基礎理論に親しんだことのほうが、いま役立っていると思います。

インタビュー/構成 猪瀬聖(ライター)

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「リーダーの母校」は原則、月曜日に掲載します。

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