ジブリの鈴木敏夫氏が禅展を鑑賞、制作に生かす
30年にわたってアニメ制作に携わってきたスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー。禅の絵画で最も多い画題「達磨(だるま)図」を模写するなど、禅美術にも造詣が深い。14日には東京・上野の東京国立博物館を訪れ、展覧会「禅―心をかたちに―」を鑑賞した。水墨画や書など禅の名宝をどう楽しみ、アニメ制作にどう生かせるか、鈴木さんの鑑賞術に迫った。
「この絵を見たかった」。満面の笑みで一直線に向かったのは「慧可断臂図(えかだんぴず)」。室町時代の禅僧で水墨画家でもある雪舟の作品だ。10月18日から始まったこの展覧会で後期展示の目玉の一つ。鈴木さんはすでに前期の展示を見に訪れたが、この作品を目当てに再び訪れた。
最初は少し遠目から眺める鈴木さん。しばらくすると作品に近づいて登場人物の衣の輪郭線を見上げながら「ここで墨を足しているんだ」。背景も含めて細かい部分もしっかりチェックする。
「僕はだいたい美術館に行くと決め打ちなんです」。鈴木氏の鑑賞方法は1作品に狙いを絞ってじっくり味わうスタイル。宮崎駿監督とともにたった1作品を見るためだけにポルトガルの美術館にまで足を運んだ経験もあるという。その結果、「誰も気づかないような背景の細かい描写をあるアニメにそのまま使った」。
宮崎監督らジブリのアニメ映画作品の魅力の一つは、背景を細部まで丁寧に描いている点だろう。1作品に絞り、じっくりと細部まで観察する鈴木さんの鑑賞スタイルに、ジブリのものづくり精神の一端がうかがえた。
(映像報道部 鎌田倫子)
■鈴木敏夫プロデューサーの鑑賞術の詳細は映像をご覧ください
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