冷蔵庫の中で野菜が成長? 生鮮品がさらに長持ち
私をささえる最愛家電 大型冷蔵庫(後編)
2015年から16年にかけて、各社の冷蔵庫のトレンドは「野菜室」と「チルド」の開発競争だったといえます。
野菜室はここ数年、内部の湿度を95%程度に保ち、みずみずしさを1週間程度は維持する機能を各社とも実現しています。
中でも今年特筆すべきなのは三菱電機。野菜室に太陽光に近い3色LEDを設置して、葉物野菜の光合成を促し、保存している間にも栄養分を増加させるというもの。一方、他社は野菜を「休眠」に近い状態にして長持ちさせるという発想。日立は触媒技術によって炭酸ガスを発生させ、野菜の発育を止めて劣化を防ぎます。
チルドは0度前後の"微凍結"状態で保存する機能ですが、三菱電機はマイナス7度、マイナス3~0度、通常の冷凍と、より細かい温度帯管理で使い勝手を向上しているのが特徴です。
近年の傾向として、省エネ競争は一段落した印象があります。冷蔵室の機能やゾーニング(区分け)も、大きな変化はありません。選ぶ際は、ライフスタイルや普段使う食材に応じて、特に重視したい機能を確認し、チェックするとよいでしょう。
サイズの割に大容量、冷凍技術のトレンドリーダー
三菱電機
マンションなどのキッチンに収まる一般的な冷蔵庫の幅が685mmですが、このサイズでいち早く600リットル台の大容量モデルを出したのが三菱電機です。
三菱は前述したようにマイナス3~0度の「氷点下ストッカーD」、マイナス7度の「切れちゃう瞬冷凍」など、温度帯管理の技術力の高さも特徴。他社が追随するようなトレンドを作り出す立ち位置にあるといえます。
今年のモデルから登場した「朝どれ野菜室」は、太陽の1日のサイクルに合わせて野菜室内の3色LEDを点灯し、光合成を促進してビタミンCや糖分などをアップ。「買ってきたときよりも栄養価が高くなる」というから驚きです。根菜類などほかの野菜に影響はないのか気になりますが、LEDが作用するのは葉物野菜のみのため心配はないとのことです。
オンリーワンの真空チルド技術 デザイン性も○
日立
日立のチルドルームは、他社にはない「真空チルド」が売り。小型のポンプで空気を吸引して、約0.8気圧に減圧しています。食品を劣化させる酸素を減らすことで、かなり持ちが違ってくるのです。
野菜室は前述したように、炭酸ガスを充満させて野菜の発育を遅らせる方式。野菜から出るエチレンガスを触媒で分解して炭酸ガスを発生させます。
また、大型冷蔵庫の冷凍室は2段収納が多いのですが、日立の冷凍室は3段収納。食材を細かく分けて整理したい人には使いやすいでしょう。また最新モデルには冷凍室最上段に全面アルミトレーを採用し、冷凍のクオリティーを向上しています。ミラーガラスを使ったモデルなど、デザイン性が高いところも評価できますね。
野菜をよく使う人に使いやすい
三菱と並び、幅685mmで600リットル台のモデルを出しているのが東芝です。断熱性や強度を落とさずに本体の壁を薄くして容量を拡大。限られたスペースでも大容量がほしいという人にはうれしいモデルです。
通常は最下段にレイアウトされることが多い野菜室が中ほどにあるため、かがまずに開け閉めができ、野菜を頻繁に出し入れする人にはおすすめです。野菜室には独自のツイン冷却方式で高湿度の冷気を送って潤いを保つとともに、野菜の老化を進めるエチレンガスを光触媒で分解する性能を従来比1.3倍に高めています。
トップユニット方式で引き出しが広々
Panasonic
冷蔵庫のコンプレッサー部は重量があるため通常は一番下部に配置しますが、これを最上部の奥に配置したのがパナソニック。もともと手が届きにくく、死角になりがちだった冷蔵室最上段の奥を有効活用するとともに、下段の冷凍室と野菜室の奥行きが広がりました。しかも奥まで100%引き出せるので、見落としがありません。買ってきた食材を大きな引き出しにざっくり収納したいという人におすすめです。
お取り寄せなどで冷凍食材が多い家庭に
シャープ
ホームフリージングをよくする人や、お取り寄せなどでとにかく冷凍食材の量が多い家庭におすすめなのがシャープの冷蔵庫。551リットルのモデルで冷凍室の容量は192リットルと断トツです。大きな冷凍室に加えて、冷気を直接当てずに乾燥を防ぐ冷凍室が1つ追加されており、個性的なレイアウトです。冷凍室が大容量の分、野菜室はやや小さめになっています。お家芸のプラズマクラスターで庫内の除菌ができるという点もポイントです。
大手プレハブメーカーでインテリアコーディネートを担当し、インテリア研究所を経て商品企画部へ。その後、インテリア&家電コーディネーターとして独立。情報ポータルサイトAll Aboutをはじめ、雑誌・新聞・テレビなど幅広いメディアで活動中。家電業界出身ではない中立的な立場と消費者目線での製品評価や、分かりやすい解説に定評がある。
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