新米を最高においしく 最新炊飯器4つのトレンド
私をささえる最愛家電 炊飯器(前編)
最近は米離れが進んでいるといわれますが、日本人の主食はやっぱりお米。おいしいご飯は何にも代えがたいごちそうです。そんなおいしいご飯を食べるために欠かせないのが炊飯器。電気炊飯器はラインアップが豊富で今や群雄割拠の時代です。価格帯も1万円を切るものから10万円を超えるものまで。機能の豊富さや内釜の素材の違いが、これだけの価格帯の幅として表れています。
少量炊きで高性能の製品が増えている
では、今年のトレンドはどうなっているのでしょうか。
最近、各メーカーが力を入れているのが少量炊きのできるモデルです。これまで少量炊きというと、一人暮らしを始める学生や社会人1年生向けの比較的安価で低機能なものが主流でした。一方、現在のトレンドは少量炊きながら高性能の製品が次々登場していること。シニア層の人口が増えたことも関係しているのでしょう。
「通常の5.5合炊きの炊飯器でも1合や2合炊きができるのでは」と思われるかもしれませんが、5.5合炊きの場合、1合や2合の炊飯ではその能力を最大限発揮するのが難しいのです。少量のご飯をおいしく炊きたいならやはり「3.5合炊き」などの少量炊飯モデルを選択するのがおすすめ。敬老の日にプレゼントしても喜ばれそうですよね。
40時間後でもおいしい! 保温機能は大進歩
2つめのトレンドは保温性能へのこだわりです。これまで炊飯器でご飯を保温すると、黄色っぽく変色したり、臭いがついたり、乾燥して固くなったりしましたよね。とはいえ、食事の時間が家族によってバラバラだったり、炊いた翌朝にお弁当を作るという場合には保温機能は欠かせません。そこでメーカー各社は保温機能に力を入れ始めています。
例えば東芝の「IHかまど炊飯器」は、真空技術を採用することで、ご飯の黄ばみや乾燥、酸化を抑え、白米なら最大40時間後でもおいしく食べられるように保温します。
一方、パナソニックでは保温時の乾燥を防ぐために、保温開始から約6時間後と12時間後にスチームを自動投入し、保温時のいやな臭いも追い出すことで、おいしさを保ちます。
象印は8月下旬に発売した「極め炊き」シリーズで、水分と熱を逃がしにくく保温中の温度ムラを抑える独自構造を開発。さらに二重内ぶたを採用することで釜内のご飯の水分を保ちます。象印の場合、「極め保温」を選ぶと低めの温度での保温となるため、「再加熱」機能によって食べ頃の温度まで上げ、保温したご飯をおいしく食べられるようにしています。
米の銘柄別はもちろん、麦めしも 豊富な炊き分け機能
第3のトレンドは、炊き分け機能がより豊富になってきたことです。少し前の炊飯器は多機能化を追いかけ、煮物や蒸し物、シチューやパンなどが作れるコースを設けたものがありましたが、現在のトレンドはとにかく炊飯にこだわること。例えば象印の「極め炊き」の場合、最大121通りもの炊き方ができるのです。
また、炊いたご飯が「ちょっと柔らかすぎた」「ちょっと硬めだったなあ」ということ、よくありますよね。そんな場合、これまでは水の量を少なめにしたり、多めにしたりして調整していました。そんな困りごとを、「極め炊き」では「我が家炊きメニュー」という機能で解決。前回のご飯の感想を選択することで好みの食感に自動で炊きあげます。
さらに、最近は米の銘柄にこだわる人も増えてきました。お中元やお歳暮、出産、結婚のお祝いなどにいろいろなブランド米がセットされたギフトが人気を集めているのもその一つの表れでしょう。いろいろな銘柄米をよりおいしく食べたい。そんなニーズを満たす機能を搭載する製品も登場しています。例えば三菱では、全国のブランド米29品種の個性に応じておいしく炊き分ける「銘柄芳潤炊き」機能を搭載。パナソニックでは合計41銘柄の炊き分けができる機能を搭載しています。
お米以外の炊き分け機能も新しく登場しました。大麦に多く含まれる水溶性食物繊維(βグルカン)は便秘解消や血中コレステロールの低減、食後血糖値の抑制、内臓脂肪減少、ダイエットなどの効果があるということから最近、麦飯の人気が急上昇しています。従来の玄米や雑穀米、おこわなどの炊飯メニューに加えて、タイガー魔法瓶や東芝は麦飯メニューを搭載。米との配合の割合によって1割麦飯、3割麦飯などがありますが、それらもおいしく炊き分けられます。
炊飯器もIoTの時代、スマホで炊飯設定も
第4のトレンドはIoT(モノのインターネット)対応への動き。代表例が三菱の炭火炊釜シリーズ「NJ-VA107」です。この炊飯器では、スマートフォン(スマホ)を使って炊飯設定ができます。ユニバーサルデザイン対応の一つとして「目の不自由な方でも使いやすい」というコンセプトで開発されたもの。スマホのアプリを起動して、米の種類や炊きあがりの硬さ、時間などを音声で設定できます。
(明日公開の後編では、各メーカーの最新製品の特徴について紹介します。)
大手プレハブメーカーでインテリアコーディネートを担当し、インテリア研究所を経て商品企画部へ。その後、インテリア&家電コーディネーターとして独立。情報ポータルサイトAll Aboutをはじめ、雑誌・新聞・テレビなど幅広いメディアで活動中。家電業界出身ではない中立的な立場と消費者目線での製品評価や、分かりやすい解説に定評がある。
(ライター 中村仁美)
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