「女性にしかできない踊りを追求」 木村カスミさん
ベリーダンサー
ベリーダンスの本場エジプトを拠点に活躍している。同国政府の公式ライセンスを持つ唯一のアジア人で、現地でもトップレベルのプロダンサー。「女性に生まれたのだから、女性としての魅力を追求したい」と、情熱的な踊りの深遠な世界を探り続けている。
海外に憧れ、キャビンアテンダントを目指して短大の英語学科に進むが、スカウトでモデルに。ファッションショーなど華やかな世界に身を置きつつ、「自分の中の熱いものを表現したい」と様々なダンスに挑戦した。
クラシックバレエやヒップホップなどを習ったが、「自分がやりたい何か」ではなかった。「優雅でセクシーで神秘的な、女性にしかできない踊り」。行き着いたのがベリーダンスだった。
ヒップホップのインストラクターなどをしながら、最初は米国、さらにトルコを繰り返し訪れ、ベリーダンスを学んだ。しかし、「本場のものではない」との思いが強まり、エジプトの著名な振付師の門をたたいた。
ベリーダンスは中東や欧米でも盛んだが、エジプトでは「インナーマッスルを使い、内側から醸し出すエレガントな動き」が特徴。「理屈でなく自分で研究しながら会得するしかなかった」。1997年にカイロの五つ星ホテルでデビューした。
それ以降エジプトを中心に湾岸諸国、欧州などでも活動。年に2回帰国し、公演やワークショップを開いている。7月の埼玉県川口市の公演では「アラブの春」を題材にしたオリジナルの踊りも披露した。カイロの自宅近くで衝突が起き、民主化の挫折を身近で体験。市民に向けた「エジプトをもう一度愛そう」とのメッセージを込めた。
今も独身。求婚されても相手が踊りを辞めることを望むため、仕事を選んできた。エジプトを拠点にするのは「いつまでも学び続けたいから」。異国暮らしは摩擦も多いが「それを機に考え、理解することが自分を広げてくれる。それがエキサイティング」という。「踊りだけでなく宗教や中東のことを体感して理解し、それを踊りを通して日本の人に伝えたい」。妖艶な踊りには深い思索が秘められている。
(横田 勇人)
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