無料ソフトを上手に使う 3年で4万円節約も
最近は5万円前後の低価格パソコンを購入する人もいるだろう。ただ、ワープロや表計算などのソフトが付かないことが多く、ウイルスの被害を防ぐセキュリティー対策ソフトや日本語入力ソフトなどを加えると追加費用がかさみがちだ。無料ソフトを使って、この費用を節約する方法をまとめた。
東京都に住む主婦の三橋美紗子さん(仮名、35)は、最新のノートパソコンを5万円で購入した。マイクロソフト・オフィスやセキュリティー対策ソフトを追加購入できたが、それらを選ばず、ネットからダウンロードできる無料ソフトを使うことにした(表)。
まず、セキュリティー対策には「マイクロソフト・セキュリティー・エッセンシャルズ」を選んだ。他社製の有料ソフトを使うと、1年おきに5000~6000円のソフト更新費用がかかる。続いて、日本語入力には2010年末に正式版が公開された「グーグル日本語入力」を使い、有料ソフトにかかる6000円前後の費用を節約した。
三橋さんは自宅では、会社から転送されたワードやエクセルのデータをたまに見ることがある。そこで、これらのデータを開ける「オープンオフィス・オルグ」も入手。マイクロソフト・オフィスを買うと約2万円の費用がかかる。このパソコンを3年使うとすると、合計で約4万円を節約できたことになる。
無料ソフトというと、従来はパソコンに詳しい人が使い勝手を高めるために、細かい機能を追加する利用法が多かった。しかし近年は、グーグルやマイクロソフト、アップルなどの大企業が、誰にとっても欠かせない有料ソフトに匹敵する機能や信頼性を提供する例が増えている。パソコン分野に詳しいライターの佐藤信正さんは、「個人のパソコンで使うのであれば、これらの無料ソフトで十分な場合が多い」という。
無料なのにはからくりがある。まずソフトやネット上のサービスを無料で提供し、その利用者に広告を配信したり、より高機能の製品を有料で販売したりする手法を採っているからだ。企業の知名度が高まり、利用者を囲い込む効果も期待できる。近年のIT業界では、こうしたビジネスが一般的になってきている。
ただし、有料ソフトに比べて足りない機能もあるので、その点を理解したうえで使うことが大切だ。例えば、マイクロソフト・セキュリティー・エッセンシャルズはウイルスやスパイウエアなど有害ソフトの被害を防ぐ機能はあるが、危険なサイトの閲覧を制限する機能は付いていない。
ITジャーナリストの本田雅一さんは「ウィンドウズパソコン全体への被害拡大を防ぐために最低限の機能を提供したもの」と、その理由を説明する。迷惑メールを除去する機能もないので、ネットプロバイダーなどが提供する対策機能を使うと良い。
グーグル日本語入力は、平仮名をある程度打ち込むと入力したい言葉を予測する機能が優れており、ウィンドウズ標準の変換機能より使いやすいという声が多い。ただ「時折誤った日本語が変換候補として表示されることがあり、仕事には使わない方が無難」(佐藤さん)との指摘もある。
一方で、オープンオフィス・オルグは今年になって山形県庁が全部署で採用するなど、自治体や官公庁で採用する動きが世界的に広まっている。個人の場合もワードやエクセルのファイルを開き、文章や数値を多少変更する程度なら十分に使える。ただし、「仕事で資料を効率的に作りたいのなら、マイクロソフト・オフィスを使う意味はある」(本田さん)。
このほか、写真や音楽などを管理する無料ソフトも多い。グーグルの「ピカサ3」やマイクロソフトの「フォトギャラリー」は、パソコンに保存したすべての写真を撮影日時の順番で表示したり、色合いやデータの大きさなど簡単な調整ができる。アップルの「iTunes」はCDからパソコンに取り込んだ音楽や、ネットで購入した曲を管理するのに便利だ。
今後は、グーグルが提供している「Gメール」のような、ウェブブラウザーで使える無料サービスの充実が進みそう。ソフトの取り込みが不要で、ネットカフェなど自宅外のパソコンでもIDなどを入力するだけで使える。
今回紹介した無料のソフトやサービスはネットを介して使うので、説明書がないことが多い。「困ったことがあれば、提供元のホームページでヘルプ情報や質問欄を参照したり、OKWaveなどの質問サイトで尋ねればだいたい解決する」(佐藤さん)という。
(稲川哲浩)
[日経プラスワン2011年9月17日付]
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