旅から生まれた挑戦者(2) 冒険旅行で現実学ぶハウステンボス社長 沢田秀雄氏

1951年に大阪府で生まれ、実家は菓子の製造卸を営んでいた。

父も母も滋賀県がルーツで、大阪で出会いました。もしかしたら私は「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしで有名な近江商人の血を引いているのかもしれません。ただ子どもの頃は商売だけは仕事にしたくないと思っていました。父親が値切る姿を毎日のように見ていたからです。相手がかわいそうに見えて、「言われた値段で買ってあげたらいいのに」と思っていました。

高校時代は自転車で全国を旅行した

商売には欠かせない値切り交渉といった駆け引きが嫌でした。もし子どもの頃の自分が大人になった私を見たら、驚くでしょうね。1円でも安く値切って仕入れた航空券を販売する旅行会社を起業したのですから。

幼い頃から冒険が好きでした。いつも見たことのない場所に行ってみたいという好奇心の塊でした。小学生時代は川べりでバッタを捕っていると「向こう岸には一体何があるのだろう」と興味がわいて川を渡ったり、隣町に出かけて夜の9時まで帰ってこなかったりして、よく親に怒られました。

家業を継ぐつもりもなく、大阪市立生野工業高校に進学した

機械工学のテクノロジーやエンジニアリングに興味があって、工業高校を選びました。高校生になると冒険のスケールが全国に広がりました。最初の大旅行が友人と一緒に出かけた紀伊半島一周のサイクリングでした。まずは地図を眺めながら、10日間のサイクリング計画を練り上げます。一日の移動距離を計算して、宿泊地を決める。それだけで気持ちが高ぶりました。

ところがいざサイクリングを始めると、計画通りに進まないのです。平たんな道ばかりではなく、向かい風の時には思うように自転車をこげません。予定時間までにホテルにたどり着けなくなりました。知恵を絞るしかありません。真夏の炎天下、友人と必死に考えました。そうするとアイデアは浮かぶものです。自転車をこぐのをあきらめて、トラックをヒッチハイクして時間を稼げばいいのです。

この旅行で、自分の頭だけで作った計画と現実は異なるということを学びました。ビジネスも同じです。売上高といった数字だけを見た計画だけでは現実にはうまくいかないものです。いかにして計画と現実の乖離(かいり)を埋めていくのか。無意識のうちに旅で覚えていったのかもしれません。

高校3年生の夏には1カ月かけて北海道を旅行し、どこまでも地平線が続く北海道の大地に圧倒されました。岬に立つと、水平線の先はユーラシア大陸です。「海の向こうにはもっと大きな世界が広がっているはずだ」。そう夢想すると身震いしました。

卒業後の進路をどうするか。進学して勉強したいという気持ちが強かったのですが、当時は日本中の大学で学園紛争が起きていました。

[日経産業新聞2016年1月4日付]

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