関西名物・紅ショウガのてんぷらが大好きな和歌山県人
ソースでてんぷら(4)
では都道府県別詳細情報の分析をと思ったら、都道府県ごとにYES、NOのパーセントを表示する地図が完成したので、特段に書くことがなくなってしまった。
改めて言えば「ソースでてんぷら派」が10%以下だったのは福島(0)、岩手(0)、山形(0)、山梨(0)、栃木(5)、群馬(6)、新潟(8)、青森(10)、茨城(10)、宮城(10)、東京(10)の11都道府県。無論、東日本勢である。
逆に50%以上だったのは和歌山(88)、沖縄(79)、高知(75)、福井(73)、鳥取(67)、鹿児島(67)、愛媛(67)、奈良(66)、徳島(64)、広島(59)、山口(57)、大分(57)、大阪(52)、長崎(50)、宮崎(50)、兵庫(50)、岐阜(50)の17都道府県(かっこ内は%)。
和歌山に行って100人に聞いたら88人が「ソースでてんぷら食ってます」と答えるかといえば、そんなことはないだろうと思えるけれど、逆に福島県内草の根分けて探してもソースでてんぷら食べてる人が見つからないということもないだろう。
とにもかくにも今回は以上のような結果が出たということにしておいていただきたい。個々の数字は別にして、西日本と東日本ではっきりと分かれたという食文化分布の一端が鮮明になったことの意味は大きいと思う。
ここでメールを紹介しよう。まずは、香川県が四国で少数派になった理由について。
なるほどねえ。うかつでした。言われてみれば香川のセルフの店の棚には各種てんぷらがずらりと並んでおりました。「てんぷらはうどんつゆに限る」というのも立派な生き方ではあります。
ところで、私は香川のうどんの店のほとんどに「おでん」が置いてあるのをみてびっくりしたことがあります。全国どこでも「うどん」と「おでん」の相性は悪いものと思っていたからです。
とくに「昆布出し」のうどんつゆを最重要視する大阪では同じ「出し」ものの「おでん」との仲は悪く、大阪在住の知人に聞いたところ「出しと出しがダブるやないか。うどん食いながらおでんやなんて気色わるい」という答えが異口同音に返ってきたのでした。
なのに香川県においてそうした声が出ないのはなぜか。
これは多分、大阪ではうどんの出しでうまいまずいを判断するから「出し」の重複が気になり、香川ではうどんは麺こそが命なので、おでんのほうの出しがあまり気にならないからなのかも知れません。私が入った高松のセルフうどんの店のおでんは出し汁を切った状態で皿に載っていましたから、こうした方法でも「出し」の重複を軽減しているのでしょう。
続いて、埼玉問題。
3年ほど仕事の関係で埼玉に住んだことがあり、嫁さんもそこで知り合いました。私の周りだけかもしれませんが、その地域には西日本、特に九州の人が多いように思いました。
(2)九州人は意見を言う人が多い
このようなアンケートでも喜んで答える人が九州人に多く、頭数が比較的多いということとあいまって、埼玉の「ソースでてんぷら」率を引き上げているような気がします。
(3)九州人が周りに伝道した
九州人ははっきり言って関東の食はあんまり合わないようですから、てんぷらに関しても「てんつゆがなかったら、ソースをかけんかい!」と周りの人に「ソースでてんぷら」を(そのアクの強いキャラで)広めていったんじゃないかと思います。関東人も「お、なるほどいけるじゃん」と、その昔ザビエルに諭されキリシタンになっていった人々よろしく「ソースてん派」に"改宗"していった可能性もあるのではないでしょうか(T・Mさん)
これは難しい問題です。
T・Mさんは「九州人伝道説」ですか…。埼玉県に「上福岡市」というのがあるくらいですから、昔から九州人が流入していたことは間違いないのでしょうし、ひまわりさんのような方もいらっしゃるわけですから一定の説得力はあります。
しかし、しかしですねえ「九州人は意見を言う人が多い」っていうのはねえ。関西人のほうがよっぽど意見を言ってるように思いますがねえ。「そのアクの強いキャラ」っていうのも、多少は認めますが…。九州人である私はなんだか悲しい。
とはいえ埼玉問題は検証するにも客観データがありません。「かもしれない」程度でとどめておきましょう。
沖縄問題。
ほぼフリッターならやっぱりソースになるのでしょうね。納得できます。
でも沖縄のてんぷらがフリッター状というのは知りませんでした。なにしろ沖縄に行くと「ポークたまご」と「ソーキそば」ばっかり食ってるものですから。
おっとここで私の友人からのメールです。
「海老」や「きす」は上品で軟弱な性格やから、塩にも天つゆにも上手に合わしやるけど「鰯」や「げそ」のような養殖などとは縁のない、世界の海を股にかけた強者には、海運王国イギリス生まれのウスターソースがぴったりなのです。
市場で買うてきた鰯のてんぷらにソースをかけて、地球の食文化交流を感じることが、大阪らしい食べ方です。ソース天丼というのはあきませんかいなあ(三林京子さん)
女優の三林京子さんです。!がやたら多い元気な文章ですね。お変わりなくてなによりです。食べてますか? 笑ってますか? 酒飲んでますか?
三林さんは自分のHPで「ああ書けば、こう喰う」というコラムを始めました。笑えます。一度のぞいてみてください。
それにしてもソース天丼というのは案外いけるかもしれません。こんどやってみよ。
と思っていたら翌日「ああ書けば、こう食う」で三林さんが早速「ソース天丼」を試作、試食した模様が克明に書かれていました。読んでびっくり。そこまでやるかー。それが大阪女のど根性かー。という内容になっています。三林さんのHPは、http://www.3bayashi.com/です。
ところで紅ショウガのてんぷらを食べている地域は和歌山(75)、大阪(65)、奈良(62)、京都(39)、兵庫(34)、滋賀(32)の順だった。関西特有のてんぷら種であることがわかる。関西に行ったら試してみることをお勧めする。
大阪出身で25年前に千葉県に越してきた西川さんなんかは今でも紅ショウガの塊を大阪から送ってもらって、家で紅ショウガ天を食べているそうだから、関西人にとってはおふくろの味に近いものなのかもしれない。
それにしてもまたまた和歌山がトップ。和歌山は「最も関西的な県」なのだろうか。もしそうなら「ソースでてんぷら」と「紅ショウガのてんぷら」を和歌山名物で売り出したらどうだろう。だめか。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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