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常に現地現物。

大野耐一氏、鈴村喜久男氏は我々に何を残してくれたのかをお話ししたくて、私がどんな環境で育ち、どんな指導を受けてきたかを述べてまいりました。総括してみますと、両氏は我々に手段や方法を教えてくれたことはただの一度もありません。常に現地現物、自分の頭で考え編み出していく習慣を身につけさせてくれたのだと思います。

今も現場に足を運ぶ(中央下が本人)

今も現場に足を運ぶ(中央下が本人)

近年、豊田章男社長の「お客様に感動と笑顔を。もっといい車を造ろうよ」の号令一下、トヨタのラインアップも大きく変貌しつつあり、設計から抜本的見直しを図るTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)も着実に進行中です。

いずれにしてもベースは「TOYOTA WAY」であり「トヨタ生産方式」で、それを支える人材なくしては成り立ちません。顧みるに本当の意味で人材育成ができているでしょうか。「最近の若い者は指示待ち族でいかん」という話をよく耳にしますが本当にそうでしょうか。

「最近の若者は……」のセリフはローマ時代からありました。それが事実なら代々繰り返されて現在はアホばかりになっているはずですが、決してそんなことはありません。指示待ち族を作っているのは己であるという反省が必要でしょう。

マニュアル化、標準化は重要ですが、それをうのみにしたまま使わせてはいませんか。仕事にカーナビを持ち込んではいないでしょうか。ナビを使ってから道を覚えなくなり、ナビがないとどこへも行けない人が増殖しています。現地現物、自分の頭で考えて探り当てていくマインドを呼び起こすことが大切です。

もう一つ強調しておきたいことは、有り物で何とか解決するというマインドが薄らいではいないかという点です。現在は全てにわたって精緻に原単位が把握されており、何か行動を起こそうとすると瞬時にコンピューターから何工数が不足するといったデータが出てくる。これも必要ですが、有り物で何とかするというマインドも大切です。

若手には難しい課題を与えよ。

豊田英二さんや大野さんは、金もない、時間もない中で勝負したことを思い起こしてほしい。大野さんが「知恵は一対百でも一対千でも伝えることができるが、意識は一対一でしか伝わらない」とよく言われました。今の時代、パワーハラスメント、時間管理などやりにくさはあると思いますが、最近若手に難しい課題を与え任せると、我々が想像もしなかったやり方で解決する例も出てきました。

要は課題の与え方とフォローの仕方です。シーラカンスと言われようが、信念を持って体力の続く限りトヨタの、そして日本のモノづくりを支える人材の育成に貢献していきたいと思っています。

(聞き手は中西豊紀)

=この項おわり

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