改善魂やまず(21) インフラ整備、10日で終了
トヨタ自動車元技監 林南八氏
前提を変えろ。
東日本大震災で被災したマイコンメーカー、ルネサスエレクトロニクスの支援では当初、復旧には2011年いっぱいかかるとのことでした。とんでもない。何としてでも短縮を図らねば。ということで、インフラ整備にかかる2.5カ月(75日)を短縮することから始めることとし、同社側に3つの提案をしました。
トヨタの好田主査(右)から説明を聞くキヤノンの御手洗会長
(1)「見積もりを出した時の前提条件を全て外し75日を10日でやる方法を考える。要員は見積もりの前提になった時点の3倍、それを3シフト用意する。つまり9倍投入する」
(2)「リンクチャートを使って、並行作業できるもの、外段取りできるものを整理し、全業者がワンチームで動けるようにすること」
(3)「フロアごとに大部屋を用意して進捗が見えるようにすること。全て現地現物、即断即決、即実行ができる体制をとること」
後は、私は黙って現地本部の机に座っていました。朝倉正司君はチームの重し役。好田博昭主査が実質的なリーダーとして星野豪志主幹と五十子泰宣主幹を使って仕切ってくれました。
トップも現地現物。
豊田章男社長も作業着とヘルメット姿で現地を訪れました。見れば実態がわかるようにしてあるため、開口一番「責任は私が取ります。思ったとおりにやってください。困ったことがあったら何でも言ってください」との一言。
こう言われたらやるしかありません。現場が一気に盛り上がりました。この一言でリーダーのあるべき姿を垣間見た気がして、心強く思うと同時に誇らしく思ったものです。