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改善魂やまず(21) インフラ整備、10日で終了 トヨタ自動車元技監 林南八氏

2013/7/22 日経産業新聞

前提を変えろ。

 東日本大震災で被災したマイコンメーカー、ルネサスエレクトロニクスの支援では当初、復旧には2011年いっぱいかかるとのことでした。とんでもない。何としてでも短縮を図らねば。ということで、インフラ整備にかかる2.5カ月(75日)を短縮することから始めることとし、同社側に3つの提案をしました。

トヨタの好田主査(右)から説明を聞くキヤノンの御手洗会長

 (1)「見積もりを出した時の前提条件を全て外し75日を10日でやる方法を考える。要員は見積もりの前提になった時点の3倍、それを3シフト用意する。つまり9倍投入する」

 (2)「リンクチャートを使って、並行作業できるもの、外段取りできるものを整理し、全業者がワンチームで動けるようにすること」

 (3)「フロアごとに大部屋を用意して進捗が見えるようにすること。全て現地現物、即断即決、即実行ができる体制をとること」

 後は、私は黙って現地本部の机に座っていました。朝倉正司君はチームの重し役。好田博昭主査が実質的なリーダーとして星野豪志主幹と五十子泰宣主幹を使って仕切ってくれました。

トップも現地現物。

 豊田章男社長も作業着とヘルメット姿で現地を訪れました。見れば実態がわかるようにしてあるため、開口一番「責任は私が取ります。思ったとおりにやってください。困ったことがあったら何でも言ってください」との一言。

 こう言われたらやるしかありません。現場が一気に盛り上がりました。この一言でリーダーのあるべき姿を垣間見た気がして、心強く思うと同時に誇らしく思ったものです。

 キヤノンの御手洗冨士夫会長も駆けつけてくれました。会長の一言で、ルネサス向けに自社のリソースを大動員してくださいました。ニコンも東京エレクトロンも同様の対応をしてくださり、半導体製造の肝に当たる設備は短期間で修復することができました。

 復旧作業中、フロアごとの大部屋では進捗の『見える化』とミーティングを徹底しました。ルールは単純で、うまくいった報告は一切不要。うまくいかない部分を顕在化して皆で知恵を出し合い、解決しました。現場ではこの繰り返しを連日行ってくれました。

 当初、皆が不可能だと思っていたインフラ整備が10日で終了。ルネサスのメンバーの中には「自動車屋に何ができるのか」と斜めに構える人もいましたが、この頃は互いに信頼関係ができ、まさにワンチーム。ルネサスの青柳隆工場長や鶴丸哲哉執行役員生産本部長(現社長)が先頭に立ち、ついに生産開始を6カ月早めることができました。

 今回の活動で得られた果実は、業界を超え、会社を超え、組織を超えて強い絆が出来たこと。そして若いリーダーの台頭があったことだと思います。

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