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トヨタ生産方式(TPS)を海外に伝道。

毎月1回、海外出張する生活が続きました。海外でも現地現物でものを見て考え、行動する文化を定着させることが私のミッションです。副社長級の米国人幹部、ゲーリー・コンビスさん、レイ・タンゲイさん、スティーブ・アンジェロさんらが必ず私について現場を歩いてくれました。

海外の工場にもTPSが広がり始めた=共同

海外の工場にもTPSが広がり始めた=共同

毎日見ているつもりの現場がいかに見えていなかったかを体得してもらうため、6時間ぶっ続けで現場観察したこともありました。彼らは音をあげずについて来てくれました。日本人以上にTPSを理解してくれたと思います。

欠点は一度軌道に乗るとそのまま継続できると錯覚することです。やはり毎日現場に出てフォローすることが不可欠です。こればかりは理屈でなく体に教え込むしかありません。私は今でも毎日作業着と安全靴で時間をつくっては現場に出るよう心掛けています。

1990年、マサチューセッツ工科大学(MIT)のジェームズ・ウォーマック教授らがまとめた『ザ・マシン・ザット・チェンジ・ザ・ワールド』の中でTPSがリーン・プロダクション・システムという名で世界に紹介されました。

米ハーバード大学のケント・ボウエン教授も経営学修士(MBA)課程で行っているケーススタディーについて「これは正解がない課題で皆に考えさせることを狙った教材だ。大野耐一さんが私よりはるか前に考えさせる教育を実践されていたことは驚きだ。素晴らしい教育者だ」と言っておられたという話を聞き、大いに共感を覚えました。

『ザ・トヨタウェイ』を書かれたミシガン大学のジェフリー・ライカー教授や、『ザ・ゴール』を書かれたエリヤフ・ゴールドラット教授も大野さんの信奉者です。お会いして話を伺いましたが非常に深く理解されていました。TPSを日本だけに定着する特殊な宗教のように言うのは大きな間違いだと思います。

情報技術(IT)化。

鈴村喜久男さんは「コンピューターは嘘つかない。しかし質問しないと答えない。こんなものに頼らずに流れを整理し、リードタイムを縮め、目で見てわかるようにせよ」とIT依存に否定的でした。しかし、海外は違います。国が広く、取引先からの距離は遠く、リードタイムは8~10日と長くなっていました。

これでは従来のかんばんによる後補充は成り立たないと考え、高岡工場(愛知県豊田市)時代にひそかに実験をしたITシステムをカナダの工場へ持ち込みました。現地の河村隆男社長をスポンサーにかんばんリフレクションシステムを完成。これに更なる改良を加え、現在の『eかんばん』へと発展させました。気がついたら10年を要していました。

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