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入社6年目、初めて大野耐一氏の直接指導を受ける。

「コロナ」の生産ラインを見直した翌年、「マークII」を手掛ける元町工場(豊田市)第2組み立て生産ラインの合理化に組み込まれました。コロナで経験していたので、まずは頻繁にライン停止を起こすマフラーの振動を吸収するインシュレーターの締め付け工程の観察から始めました。

現場に立つ大野氏

現場に立つ大野氏

集中して観察していると背後に人の気配。振り返ると何とそこには大野耐一常務(当時)が立っています。平社員の私が常務と1対1で対峙するのは初めてなので、あわてて部長を呼びに行こうと歩き出したところ「どこへ逃げるのか」と一喝。「逃げるのではありません。部長を呼びに行ってきます」と答えると「その必要はない」。

仕方なく元の場所に戻って観察を続けたところ「君は何をしているのかね」と聞いてくるものだから、こちらはもう汗だくです。そうこうしているうちにインシュレーターのプレス品の穴位置がおかしいと気がつきました。測ると案の定、位置が狂っています。

大野さんは私の作業を見ていましたので「プレス工程へ行って穴位置のずれを直してきます」と説明すると「そうか」と納得してくれた様子。そこで寸法の狂ったプレス品を抱えてその場を離れようとしたら「逃げるなと言っただろうが」と怒鳴ってその場を動こうとしません。やむなく元の場所へ戻って観察を続けていると、また「君は何をしているのか」の質問です。

万策尽きて観察に徹していると、穴位置が狂っていても後方へ押しながら締め付ければうまくいきそうなことが分かりました。作業者に説明すると、百発百中トラブルなしに締め付けることができ、ライン停止はピタッと収まりました。ほっと一息、その場に立っていたら「いつまでそこにいる気だ」との怒声が。急いでプレス工程に穴位置の修正を依頼しに行きました。

現場では暫定処置も大事。

話をつけて元の場所に戻ったら、そこにはもう大野さんの姿はありません。代わりに鈴村さんが立っていて「おやじにやられたな」とニヤリ。「あんな訳の分からんおやじなんか知らんわ」と言うと、鈴村さんが「本対策も大切だが暫定対策を先にやらんと」と真意を解説してくれました。

「本対策品が届くまでラインで作業している若い衆はずっと苦労が続くわな。大野さんはそれをお前に教えたかったんだ」。そう話す鈴村さんに「最初に言ってくれれば私でもすぐ分かる」と反論しましたが、「そうかも知らんが3日で忘れるぞ。今みたいな教え方をされると一生忘れんだろう」と諭されました。

衝撃的な出会いでしたので、今でも強く印象に残っています。

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