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「日本的経営ではダメ」人事のプロが一刀両断 早稲田 内田・入山両先生:LIXIL八木副社長(上)

2016/3/18

 日本経済新聞の人材教育事業「日経ビジネススクール」と早稲田大学ビジネススクールは2月25日、早稲田大学日本橋キャンパスで、「日本発グローバル経営のあるべきかたち~日本から発信すること、世界から学ぶべきこと~」と題したセミナーを開いた。

 グローバル人材の育成が急務となる中、企業の人事・研修担当者らを前に、グローバル時代を勝ち抜くための経営のあり方や人材育成方法をテーマにパネル討論を展開。さらに、企業のエグゼクティブを対象とした早稲田大学ビジネススクールの新しいプログラム「EMBA Essence」の紹介が行われた。

早稲田の2人先生対LIXILの人事のプロ

 メーンのパネル討論は、「日本発グローバル経営のあるべきかたちとそれを支える人材育成」がテーマ。人事の専門家である八木洋介・LIXILグループ執行役副社長、ボストン・コンサルティング・グループ元日本代表の内田和成・早稲田大学ビジネススクール教授、ベストセラー書『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』の著者、入山章栄・早稲田大学ビジネススクール准教授の3人が、鼎談した。(以下は討論の要約)

内田氏

内田氏 モデレーターの内田です。今日の討論の前提として、グローバル化が進行する中、企業の経営が大変になってきているという実態がある。そこでまず、グローバル経営の視点から、日本企業はどうあるべきかという議論をしたいと思います。次に、グローバル時代に通用する人材の育て方や採用の仕方について意見交換し、最後に、人材育成のためにエグゼクティブプログラムが果たす役割について、それぞれ意見を述べていただきたいと思います。

日本企業、「強い人は少ない」

 まず八木さんから、今の問題意識をお聞かせ下さい。

八木氏 私はもともと日本の鉄鋼メーカーで18年間働き、その後、GE(ゼネラル・エレクトリック)に13年いました。外資系企業から日本企業をながめて思ったのは、日本の会社には良い会社が多いが、けっして強くはないな、ということです。働く人たちも、みんな良い人たちですが、強い人は少ない。そんな日本企業を、グローバル競争に勝つために強くしたいとの思いで、LIXILに入りました。

八木氏

八木氏「日本的経営を礼賛してはいけない」

 なぜ日本企業は強くないか。まず、「日本的経営」を礼賛する人たちがいますが、間違いです。経営というのはそれぞれの会社がそれぞれのやり方でやるもの。それなのに、日本的経営と言ってしまうと、それはつまり、他社と同じことをやるということ。経営は差別化が重要。他社の真似をしても世界で勝てるわけがありません。

 人材の採用も同じです。依然、多くの日本企業が人材採用の際に重視しているキーワードは、協調性と同質性。つまり会社に入ってからみんなと仲良くできるかどうか。その結果、社員が同質的になり、重要な意思決定が空気感で行われるようになってしまった。空気感による意思決定は、誰がどんな戦略で決めるのかがはっきりしない、誰もリスクを取らないやり方です。時間もかかる。これでは変化の時代に勝てません。だから、変化に対応できる人材の育成が日本企業の課題なのに、それが出来ないのです。

 教育にも問題があります。グローバル人材とは、自分の考えをしっかり持ち、発信できる人材のこと。しかし、こうしたタイプは日本には少ない。原因は子供のころの教育です。欧米の子供は、1番になれ、自己主張しなさいと育てられます。ところが日本の子供は、みんなに優しくしろ、思いやりを持て、人に迷惑をかけるな、つまり自分を抑えろと教育されます。周囲への気配りができるのはよいことですが、グローバルで勝つには自己主張も大切。日本の人材育成の要諦はそこだと思います。

内田氏 入山先生はどんな問題意識をお持ちですか。

入山氏

入山氏「グローバル企業はダイバーシティを重視」

入山氏 学者から見ても、日本的経営という言い方はおかしいと思います。GEやLIXILのように、優れた会社というのは、本質的な部分はどの国の企業も同じです。共通しているのは、まず、ダイバーシティです。企業がグローバル時代を勝ち抜くには、どんどん新しい手を打ってイノベーションを起こし続けることが重要ですが、そのために大切なのが人材のダイバーシティ。イノベーションは異質な知と知が出合うことによって生まれるからです。グーグルは社是にダイバーシティを掲げています。日本企業でも、LIXILやカルビーなど優れた会社は、ダイバーシティを非常に重視しています。ダイバーシティがイノベーションを起こすとちゃんと理解しているからです。

 2番目の共通点はオープンな組織です。日本企業によくみられる縦割りの組織だと、イノベーションはなかなか生まれません。

八木氏「中身のないダイバーシティではね」

八木氏 確かに、ダイバーシティを推進する目的の1つはイノベーションを起こすことですが、形だけのダイバーシティではイノベーションは起きにくい。ダイバーシティの形すらない日本企業は形から入ることも大切ですが、一番重要なのは中身を変えること。例えば、ダイバーシティと言って女性を管理職に昇進させる会社は山ほどあるが、なぜダイバーシティが必要なのか本当に理解している会社は少ない。リーダーの育成も同じで、クロトンビル(米ニューヨーク州クロトンビルにあるGEのリーダー養成施設)に3週間入れても、それだけではリーダーは育ちません。リーダーシップとは何かということを深く議論し理解した上で実施しないと、成果は出ないのです。

内田氏 私の体験を話すと、ある経営者から「変化を起こすために中途採用を積極的にやっているが、どうもうまくいかないので、見てくれないか」と頼まれたことがあります。それで、その会社の人事にどういう基準で採用しているのか聞いたら、「会社とうまくやっていけるかどうか、会社に溶け込めるかどうかで選んでいる」と答えるんですね。それじゃうまくいくわけがないと思いました。

 人材育成についてもっと議論を深めたいと思います。

八木氏「研修では人は育たない」

八木氏 グローバル時代に活躍できる人は、明確なビジョンを持ち、それを他人にしっかり主張でき、そのビジョンを実行するための戦略的思考ができる人です。実行するには人を巻き込まないといけないので、コミュニケーション能力も不可欠。自ら率先して行動する実践力も重要です。さらに言えば、ビジョンは、自分の考えや価値観をしっかり持っていないと出てきません。戦略を立てるには、ビジネスインテリジェンスが絶対に必要です。リーダーを育てるということは、これら全てを兼ね備えた人間を育てるということです。

 では、どう育てるか。私は、常々、研修では人は育たないと言っています。LIXILでも研修をやっているが、たった15日間の研修で、リーダーが育つわけがない。では研修は何のためかというと、気付きを与えるためです。気付きを得たら、後は自分で勉強してもらう。こうした気付きの場を繰り返し提供することが、企業にとっては大切です。

[日経Bizアカデミー2016年3月18日付]

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