確定申告の季節到来 税の知識、間違っていませんか?
確定申告シーズンがやってきた。多くは無関係と考えがちだが、多額の医療費を払えば還付を受けられるし、贈与を受けたら贈与税の申告が必要。正しい税の知識を身につけることは大切だ。そこで確定申告や今後変わる税制についてクイズを作製。インターネットで男女千人に回答してもらい、正答率の低い順にランキングした。あなたも実力をチェックしてみよう。
還付申告、早めでスムーズ
正答率が低かったのは手続きをスムーズにする常識だ。インターネットで手続きできるe-Taxは、利用する前に一手間が必要。還付申告は確定申告開始前の1月から受け付けてもらえることも、半数超が知らなかった。「空いている今のうちに還付申告をすれば、還付金も早く受け取れる」(ファイナンシャルプランナーの鈴木暁子さん)
2016年度税制改正大綱に関連した設問の正答率は総じて55%程度。通常国会で改正法案が成立することが条件だが、自動車取得税の廃止など生かしたい変更がある。覚えておこう。
答えは× 国税庁の「e-Tax」を利用すれば、パソコンでインターネットを通じ確定申告ができる。ただし、本人の税と社会保障の共通番号(マイナンバー)を記した個人番号カードと、個人番号カードを読み取れるICカードリーダーが必要。ICカードリーダーは2000円程度で市販されている。個人番号カードは1月中旬から交付予定。まだ申請していない人は今年の確定申告に間に合わない公算が大きい。住民基本台帳カードで利用中の人は、有効期限前に個人番号カードでの利用に切り替えよう。
スマートフォンなどでも申告書は作成できるが、税務署への提出が必要だ。
答えは○ 確定申告の受け付け開始は2月16日だが、マイホーム購入で住宅ローンを借りるなど、還付が受けられる人は1月1日から申告できる。税務署の混雑を考えれば早めに済ませたいはずなのに、直近5年間に確定申告をした人も51%が間違えた。
答えは○ 2016年度税制改正大綱に盛り込まれた。法案が成立すれば、17年1月以降、医療用から転用された一部の市販薬の購入費が、家族合わせて年1万2000円を超えた場合、超過額を8万8000円まで控除できる。ただし、医療費控除とどちらかを選ぶことになる。
答えは○ 医療費や寄付に絡む還付申告は5年前までさかのぼってできる。例えば3年前に歯の治療で10万円超払ったのに還付を受けていない人は、申告書を提出すれば納め過ぎた税金が戻ってくる。ただし、5年前といっても、その年だけで10万円超の医療費を払っていることが条件。5年分の合計ではないので注意を。
答えは× 収入が公的年金だけの人も、年金額が年400万円を超える場合、確定申告が必要になる。また400万円以下であっても、年金以外の所得が20万円超ある人や医療費控除などを受けたい人は確定申告をすることになる。意外なことに正答率が最も低かったのは60代で、40.5%だった。心に留めておこう。
答えは○ 人間ドックの費用は通常は医療費控除の対象にならないが、人間ドックで病気がみつかった場合は別だ。引き続きその治療を受けたケースでは、人間ドックの費用は医療費に含められ、年間支出が10万円を超えれば控除を受けられる。このほか、介護サービスの費用でも医療費控除の対象になるものがある。
答えは× 確定申告は所得税の手続きで、相続税と関係がないのに間違う人が目立った。相続税の申告・納税は相続人が相続の開始を知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10カ月以内にしなければならない。死亡した人の確定申告は相続人全員の連名で、死亡した日の翌日から4カ月以内に行う。
答えは× スーツ代などは経費として「特定支出控除」を受けられる。年間支出が給与所得控除の半分を超すことが条件。年収500万円なら77万円を超過した額が控除される。職務関連支出と勤務先が認めた書類も必要だ。
答えは○ 給与所得者がアルバイトで収入を得ても、年間20万円以下であれば確定申告は不要だ。税額を計算する場合は、収入からそれに必要な経費を差し引いて所得を求める。20万円を超えた場合は確定申告が必要だ。
答えは× 特産品がもらえる「ふるさと納税」は15年4月から寄付先自治体に申告すれば、税務署に行かなくても寄付額から2000円を引いた額が住民税から軽減される。ただし6自治体以上に寄付すると確定申告が必要。
<知っておこう 税の知識>
◆贈与も教育資金贈与制度なら税務署手続き不要
年間110万円超の贈与を受けると、贈与税の申告が必要。だが、子や孫の教育資金にあてる贈与が1人あたり1500万円まで非課税になる教育資金贈与制度なら、信託銀行などで口座を開設する際に、非課税申請を提出すれば税務署に伝わる。ただし、贈与を受けた子や孫が満30歳になったときに110万円超の残高があれば、贈与税の申告と納税手続きをする必要がある。
◆消費税率10%に上げたら自動車取得税廃止
17年4月に消費税率を10%に引き上げる際、自動車取得税を廃止することが16年度税制改正大綱に盛り込まれた。新たに自動車税環境性能割(仮称)という税金が車購入時に課されるものの、電気自動車やプラグインハイブリッド車などは非課税となる。
◆2017年から国税がクレジットカードで納められる
これも税制改正大綱に盛り込まれた。現在も固定資産税などをクレジットカードで納付できる自治体はあるが、17年1月からはe-Taxで申告した場合、所得税など国税もクレジットカードで納められるようになる見通しだ。カード会社への手数料はかかる。
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表の見方 冒頭に質問を表記。数字は正答率。
調査の方法 確定申告や税の知識、2016年度税制改正大綱から、税理士、ファイナンシャルプランナーの助言を得て正誤問題を作成。12月中旬にインターネット調査会社のマイボイスコム(東京・千代田)を通じ、20~60代の男女に回答してもらい、正答率の低い順にランキングした。有効回答人数は1000(各世代とも男女同数)。
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